2015 Fiscal Year Research-status Report
日本近世仏教教団の流動性に関する研究-浄土宗教団を中心にして-
Project/Area Number |
15K02853
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Research Institution | Kacho Junior College |
Principal Investigator |
伊藤 真昭 華頂短期大学, その他部局等, 教授 (30632898)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 檀林 / 浄土宗 / 修学 / 入寺帳 / 増上寺 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、現在浄土宗大本山増上寺に残されている「増上寺入寺帳」全36冊のうち、第1冊目を分析した。浄土宗では一人前の僧侶となるためには関東十八檀林のどこかで修学する必要があった。カリキュラムは九段階あり、一段階を終えるには三年以上を要した。最終段階の無部に至るまでの八段階を終えるには最低でも24年必要であった。この史料は檀林のひとつ、増上寺に修学に来た僧侶の入学者名簿である。 「増上寺入寺帳」で現存最古のものは、寛文9年(1669)10月1日から始まり、延宝3年(1675)九月二十九日で終わる、6年間の入寺記録である。記載内容は、①初入寺者の出身地、②入寺時の修学段階、③入寺銭の支払状況、④入寺時の月行事名、⑤月別入寺者数、⑥指南者名と寮主名、⑦後の貼り紙や書き込み、の7項目であった。 検討の結果、この6年間の入寺者数1385名の内、増上寺に入寺する住職に付き従って来た「随身」が、森誉・乗誉・広誉の三代合わせて276名、再入学者である「帰山」は13名、知恩院住職万無の弟子が6名、残りの1090名が増上寺への初入寺者である。彼らの出身地は武蔵国が最も多く、初入寺者全体の30.5%を占める。以下山城国6.4%、伊勢国3.9%、摂津国3.8%と続く。修学段階は名目極新来が163名、名目初新来が57名、頌義極新来が717名、頌義初新来が153名と、大半が第二段階である頌義部からのスタートとなっている。入寺銭はいまでいう入学金で、初入寺者の全てが納めている。初入寺月別では夏安居の4月と冬安居の10月が多い。指南者は全部で119名いて、1090名の初入寺者を担当しているが、人数は1人から99名までと均一ではない。そして後の書き込みには、その修学者がその後どうなったのかの学籍異動が記されており、増上寺で学んだ後どこに拡散したのかを伺い知ることができるが、その検討は今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①史料調査先が遠方のため、なかなか日程が取れず、予定していた史料全てを調査しきれなかった。 ②調査した増上寺の史料も予想以上に内容が膨大であり、調査や記載内容の入力作業に時間がかかった。 ③入力作業を補助してくれる人員を探し出すのが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画では十八檀林全てで史料調査を実施する予定であったが、史料調査は増上寺の入寺帳だけとし、その分この史料の分析に重点を置きたい。 また継続して入力補助者を募集し、研究がスムースに遂行するよう努めたい。
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