2017 Fiscal Year Annual Research Report
Study on mobility of Japanese Buddhist religious society in Japanese early modern period - Focusing on the Jodo sect -
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15K02853
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Research Institution | Kacho Junior College |
Principal Investigator |
伊藤 真昭 華頂短期大学, 歴史学科, 教授 (30632898)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 増上寺 / 入寺帳 / 檀林 / 浄土宗 / 人の異動 / 人的ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
浄土宗の僧侶は、住職資格を得るために、関東に18ある檀林のどこかで修学しなければならず、そのうち最も格式の高いのが江戸芝にある増上寺である。その宝蔵には、寛文9年(1669)から明治20年(1886)までの入寺者名簿が34冊現存している。この218年間で欠落もしくは大破で閲覧不能部分は81年間分で、調査の結果137年分の修学者名簿が現存していることが判明した。 この名簿を「入寺帳」といい、そこに記載されている全データを読解し、その内容を項目別にエクセルに全文入力した。入寺には初めて増上寺に入る初入寺、他の檀林から転入する他山、一度増上寺に入寺した者が他の檀林に転出した後再び増上寺に戻る帰山があるが、入寺帳にはこれら全ての人物ついてのデータが記載され、その延人数は23,683人であった。その全貌が明らかになった点は大きな成果であろう。 記載内容は、①入寺年月日、②入寺時の修学段階、③入寺者名が大書され、割書で、④出身国、⑤出身寺院、⑥出身寺院の師匠名、⑦入寺時の年令などが記入された。さらに特記すべきは、その後の履歴が記入されている点である。 履歴には指導者が檀林に住職として転出するとそれに付随する随身や、そこから他の檀林に移動する場合や、増上寺に帰ってきた場合、改名、師匠替え、落第などの事項が記載され、入寺後の動向を追うことができる。最終的には入寺帳から名前が抹消される消帳で増上寺からの退去が判明するが、それには住職に就任する「成就」、病気で退寺となる「病身」、死亡する「往生」があった。住職に就任する場合の多くは出身寺院に帰ったと思われ、「国元成就」と記載された。 その後は地元で住職をすることになるが、入寺帳で追跡できるのはここまでである。彼らの地元での動向は今後の課題であるが、履歴からは18壇林間で頻繁に異動していることが明らかとなり、中にはそのまま関東で住職となる者もいた。
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