2016 Fiscal Year Research-status Report
17~19世紀日本列島における屎尿流通の基礎的考察
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15K02857
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
荒武 賢一朗 東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (90581140)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | し尿 / 肥料 / 流通史 / 農業史 / 衛生史 / 商業史 / 比較史 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の主な活動は、1研究課題に関する先行研究の検討、2歴史資料調査の実施、3収集資料のデータ化、の3点である。 1は、前年度に手掛けた作業を基礎として近世・近現代における屎尿肥料と個別農家経営を中心に先行研究の収集と分析をおこなった。戦前期から展開してきた近世日本の農業史研究では草肥や魚肥が田畑の肥料として主流だったという論説が多い。また、近現代においては人造肥料(化学肥料)の発達と普及が認められるものの、大都市圏における屎尿処理問題と照らし合わせた場合、日本列島の人口増大とともに屎尿の肥料利用が少なからぬ存在であったことが指摘できる。2は、(1)原文書(17~19世紀の古文書)、(2)公刊されている自治体史(都道府県・市町村の歴史)および農業史関係の資料集、の2つの系統について調査を進めた。(1)は秋田県の湯沢市立図書館、三重県総合博物館、兵庫県の尼崎市立地域研究史料館などの資料所蔵機関の協力を得て、古文書の閲覧と写真撮影を実施した。いずれも農家の歴史資料であるが、とくに肥料の売買に関する文書に注目し、およそ120点の資料をデジタル画像で収集している。(2)は東京都立中央図書館、大阪市立中央図書館、県立長野図書館、佐賀県立図書館などで自治体史の閲覧と複写をおこなった。全国各地の個別農家経営に関して情報を収集できたことは研究課題を大きく前進させたと考えている。3については前年度に収集したものを含め、今年度の調査実績を反映させるべく資料情報の一覧化に取り組んでいる。さまざまな地域の資料を入手したことで、肥料利用の普遍性や、農作物や気候による特殊性を比較分析できる素地が完成しつつある。 今年度は屎尿肥料に加え、個別農家の経営や村落社会における肥料の入手経路などに視野を広げながら資料収集を実施した。この成果は最終年度となる次年度に口頭発表や論文執筆で活用していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
屎尿流通の解明を中心的課題にしながら、農家の施肥状況や経営史に関する文献をふまえ、論点の拡充ができている。資料の収集については、全国各地の所蔵機関や図書館で予定通り調査を進めており、古文書と公刊資料の双方で新たな知見を得ている。これらの情報を集積し、データ入力も当初の予定通りに進行中である。今年度の諸作業を総合化することで、全国各地の屎尿流通に関する共通性や特殊性を確認できたことも有意義な成果であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の課題に関する先行研究や関係資料の収集は完了に近づきつつあるが、資料所蔵機関などから新たな情報を入手したこともあり、引き続き資料調査を進める。今年度までに得られた資料に基づき、研究論文の執筆をおこない、成果の公表に努めたい。また、農業史および流通史の専門家を招き、本研究課題の意義や成果について議論をする研究会を実施予定である。
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Causes of Carryover |
1予定していた物品購入を次年度に行うこと、2予定していた調査業務補助(謝金)が実施できなかったこと、3今年度に予定していた英文校閲を次年度に実施すること、の3点が挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、1物品購入、2旅費、3研究会開催費用、4英文校閲費として支出する。
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Research Products
(1 results)