2017 Fiscal Year Research-status Report
維新政権期における明治太政官文書の生成・蓄積と伝来に関する復元的研究
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15K02859
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
箱石 大 東京大学, 史料編纂所, 准教授 (60251477)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 日本史 / 近現代史 / 史料学 / 維新政権 / 明治太政官文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、維新政権期における明治太政官文書を研究の対象とし、(1)国立公文書館と東京大学史料編纂所に分割所蔵されている維新政権期明治太政官文書原本群と、(2)各地に現存する旧藩大名家文書から抽出した明治太政官関係文書を素材に、文書群としての生成・蓄積過程とその構造の復元・分析、及び文書群としての伝来経緯の解明を目的としている。 (1)に関する研究実績は以下の通りである。①研究協力者の助力を得て、東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の整理未着手部分の整理・目録データ作成及びその分析を進めた。本年度は2178件の目録データ作成が完了した。②国立公文書館所蔵「多聞櫓文書」を調査した結果、江戸幕府文書であるはずの同文書群に維新政府関係文書が混入していることを確認した。一方、「復古記原史料」の中に本来は「多聞櫓文書」にあるべき幕府文書が混入していることも確認した。これらの事実は、「復古記原史料」と「多聞櫓文書」が同一時期に太政官修史部局の管理下にあったことを示唆している。文書群の伝来に関わる問題であるため、さらに分析を深めたい。これに関しては、他機関における維新政府関係文書の所在調査を進めたところ、宮内庁が管理・所蔵する文書群の中にも、本来は「復古記原史料」と一体であった可能性がある文書が含まれていることを確認しているので、維新政権期明治太政官文書の伝来を解明するための重要な手掛かりが徐々に得られつつある。 また、(2)に関しては、山口県文書館所蔵の維新政府出版物(官版日誌類や政体書など)、長州(山口)藩版の板木群と木活字及び植字台(盤)を調査した。出版物の活用は維新政府による文書行政の新展開と捉えることができるので、諸藩における維新政府出版物の受領状況の解明は重要なテーマとなるが、同藩の場合は、維新政府出版物について独自の重版・類版を刊行している点で特筆すべき事例である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国立公文書館と東京大学史料編纂所に分割所蔵されている明治太政官文書原本群の分析については、東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の整理・目録データ作成及びその分析が、研究協力者の助力によって前年度以上の成果を挙げることができた。また、国立公文書館所蔵「多聞櫓文書」と東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の文書の一部が相互に混入し合っていること、宮内庁が管理・所蔵する文書群の中にも本来は「復古記原史料」と一体であった可能性がある文書が含まれていることを確認できた点は、維新政権期明治太政官文書の伝来と現状を理解するうえで重要な手掛かりが得られたと考えている。 一方、旧藩大名家文書から抽出した明治太政官関係文書の分析については、維新期における長州(山口)藩の出版活動に関する史料の調査とその分析で成果があった。出版物の活用は維新政府による文書行政の新展開と捉えることができるので、維新政府出版物を受領するだけでなく、独自の重版・類版を刊行していた同藩の事例を掘り起こしたことは大きな成果である。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)国立公文書館と東京大学史料編纂所に分割所蔵されている明治太政官文書原本群の分析については、東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の整理・目録データ作成及びその分析を、本研究の最終年度となる次年度においても研究協力者の助力を得て推進する。また、国立公文書館及び他機関所蔵の維新政府関係文書についても、引き続き調査・研究を進める。 (2)旧藩大名家文書から抽出した明治太政官関係文書の分析に関しては、さらに継続調査が必要と判断される遠隔地所在文書群の出張調査を進めるとともに、東京都内近郊に所在する関係史料の調査・研究も可能な限り実施する。 (3)年度末までに、研究代表者・研究協力者による研究成果の取りまとめとその公開を行なう。
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Causes of Carryover |
本年度は、東京大学史料編纂所所蔵「復古記原史料」の整理・目録データ作成作業などを促進させるため、謝金で雇用した研究協力者の勤務日数を週1日から週2日に増やし、他の経費の支出をできるだけ抑制した。この結果、主として旅費に残額(次年度使用額)が生じてしまった。 したがって、次年度は、翌年度分として請求した助成金額と上記の次年度使用額を合算して使用することになるが、旅費については、さらに継続調査が必要な遠隔地に所在する旧藩大名家文書の出張調査などにも適切に支出したい。そして、次年度は本研究の最終年度となるので、研究代表者・研究協力者による研究成果の取りまとめとその公開を行なうための経費としても支出する予定である。
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Research Products
(5 results)