2016 Fiscal Year Research-status Report
近世東北地方における自然資源の利用・管理と地域社会に関わる歴史学的研究
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15K02860
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
高橋 美貴 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90282970)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 陽一 東北大学, 東北アジア研究センター, 助教 (40568466)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 地域史 / 古文書 / 自然資源の利用と管理の歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下のような実績を得た。 1.2016年11月19日に、東日本大震災からの復興を進めている女川町(於:女川町まちなか交流館)において、本研究の成果に基づき「大肝入文書から見る江戸時代の女川‐村と人びとの生き残り戦略‐」と題する講演を行った。 2.前年度の作業を継続し、一関市大東町金家文書の整理・撮影・分析を進めた。具体的には、次の(1)~(4)のような作業や企画を実施した。(1)9月16 ~18 日に、東北大学災害科学国際研究所において、同家文書の簡易目録の作成と報告書作成の準備を行った。また、17日には、史料所蔵者宅に伺い、借用史料返却と新たな未撮影史料の借用を行った。(2)11月19日に開催した女川町での講演の翌20日には、東北大学災害科学国際研究所において同家文書の簡易目録の作成と報告書作成の準備を行った。(3)1月18~19日には、東北大学東北アジア研究センターにおいて、同家文書の簡易目録の作成と報告書作成の準備を行った。(4)3月8~10日には、東北大学東北アジア研究センターにおいて、同家文書の簡易目録の作成と報告書作成の準備を行った。 3.仙台藩を事例とした本研究との対比を意図し、同じく海洋での漁業を基幹的な生業としつつも、沿岸地域に森林資源を豊かに持った豆州内浦地域を対象として分析を進めた。この分析を通して、2016年9月に、「近世における水産資源変動と山林・獣害―豆州内浦を事例として―」(渡辺尚志編『生産・流通・消費の近世史』勉誠出版に所収)を発表した。この論文は、本科研を通して提起した論点を、東北地方を超えた地域的な広がりのなかで位置づけていくことを意図して作成したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、東北地方、なかでも仙台藩領を主なフィールドに、1.沿岸地域と2.内陸地域の二つの地域を拠点とすることで、藩の林政や流域史なども意識しながら、森林資源の利用と管理に関する資料の発掘・整理と分析を進めることを目的としている。 1.については、仙台藩領の①「牡鹿郡女川町木村家文書」、②「同町丹野家文書」、③「同町須田家文書」のほか④「桃生郡名振浜永沼家文書」を素材に、史料の収集・分析を進めることとしていたが、これについては、昨年度、『仙台藩の御林の社会史 三陸沿岸の森林と生活』(蕃山房)を刊行し、本年度はその成果をもとに女川町において講演会を開催することができた。また、本年度は、東北地方との比較を意図し、大部の活字資料が蓄積されている伊豆半島沼津市の内浦沿岸地域を事例とした分析を進め、論考を発表することができた。 2.については、「一関市大東町金家文書」の整理・撮影を進めることを課題としているが、本年度もこの方針を継続した。ただし、昨年度、史料の整理・撮影のための作業集団が20名以上に及び、所蔵者宅にご負担を与えるなどの問題も生じたため、本年度は、この点に配慮し、所蔵者の御了解をいただいたうえで、史料の一部を借用のうえ、東北大学災害科学国際研究所歴史資料保存研究分野にて撮影を進めた。また、本科研期間中に所蔵者に史料の概要な内容の一部なりとも還元することを意図し、一点ごとの目録を作る方針をひとたび控え、史料の概要目録の作成と報告書作成のための準備を本年度より開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
仙台藩領を主なフィールドに、1.沿岸地域と2.内陸地域の二つの地域を拠点とすることで、藩の林政や流域史なども意識しながら、森林資源の利用と管理に関する資料の発掘・整理と分析を進めるという本研究の課題のうち、1.については、H28年度、①前年度刊行したブックレットの成果をもとに女川町において講演会を開催するとともに、②分析対象としている東北沿岸地域との比較研究を意図して、伊豆半島を事例とした研究論文を発表した。H29年度は、①の作業を継承し、三陸沿岸地域での講演を通した研究の地域還元を続けるとともに、②の比較研究の作業を継続しつつ新たな論文発表を目指し、本研究で提起した論点を、より広域的な視野から深めたい。 一方、2.については、H28年度と同様、「一関市大東町金家文書」の撮影作業を継続し、最終年度であるH29年度中に史料撮影を完了することを目指したいと考えている。それと合せて、史料の概要目録データを集積するとともに、途中報告となることも覚悟しつつ、報告書作成のための準備を継続し、研究期間内に報告書を完成させることを目指したい。
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Causes of Carryover |
本科研申請時に想定していた調査先での大規模調査を実施することが難しくなり、所蔵者から史料を借用のうえ、調査地から近い研究分担者の所属する東北大学にて撮影を行うという形式に変換したことが、本年度剰余金が生じた主な理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
史料撮影方式の変更が必要となったものの、借用したうえでの撮影作業自体は比較的順調に進み、整理封筒や機材などの必要量が増えることとなると予想している。また、最終年度であるH29年度は、報告書の作成を計画しているため、そのための研究会や報告書そのものの作成費用に研究資金を振り向けていきたいと考えている。
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Research Products
(1 results)