2018 Fiscal Year Annual Research Report
Oral History of Japanese Disabled War Veterans and Their Families in the Post-World War II Period
Project/Area Number |
15K02863
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
藤原 哲也 福井大学, 学術研究院医学系部門, 教授 (30362338)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 戦傷病者 / オーラル・ヒストリー / 戦争 / 障害者史 / 福井県 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年から平成30年にかけて実施した福井県下の戦傷病者と家族(妻)への計30回におよぶ聞き取り調査から次の3点が明らかにされた。(1)戦傷病者は戦争経験のない家族に戦争体験を語る機会が少なかったが、戦争体験者や戦争に理解を示す者には自ら体験を語る傾向が強かった。(2)傷痍軍人会会員は一般に持たれている彼らのイメージとは異なり、多様な戦争経験や受傷経験を持つ者から構成された。概して、彼らは「傷痍軍人」としての強い意識を持ち、傷痍軍人会や戦傷病者に強い関心を持っていたが、「障害者」としての意識が希薄であった。(3)戦傷病者の家族(妻)のほとんどは健常者であった。彼女たちは夫の受傷時期(結婚時期:受傷前と受傷後)や結婚理由によって夫らの障害や戦争について理解も異なり、傷痍軍人会妻の会への参加程度の違いが認められた。 平成30年度には国内外の学会において口頭発表と執筆活動に従事した。9月、日本オーラル・ヒストリー学会にて「福井県の戦傷病者の家族のオーラル・ヒストリー」と題する口頭発表を行い、福井県傷痍軍人会・妻の会で主要な役割を果たした3名の女性のインタビューから浮き彫りにされる戦後日本における戦傷病者の家族の生活実態を報告した。3月、ロンドン大学におけるJapan Forum Workshopにおいて、"Living with Wounded Husbands: Oral History of Japanese Disabled War Veterans' Wives in Prefecture"と題する報告では戦傷病者の家族(妻)の証言から多様な役割を担ってきた彼女たちと夫の関係を明らかにした。この報告をJapan Forum誌に投稿することになった。また、これまでの口述記録と並行して収集できた未公開史料を反映させ、日本の戦傷病者の歴史に関する学術書を現在執筆している。
|