2016 Fiscal Year Research-status Report
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15K02868
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
松尾 晋一 長崎県立大学, 地域創造学部, 准教授 (40453237)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 情報 / 大陸 / 朝鮮 / 琉球 / 長崎 / 対馬 / 唐兵乱 / 江戸幕府 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、明清交替の情報分析を通じて、大陸からの諸情報が日本に流通していくメカニズムを解明し、その上で幕府による情報の受容と活用を史料から読み解き、東アジア社会と日本との関係理解を見直すことである。 平成28年度は、長崎県立対馬歴史民俗資料館や長崎歴史文化博物館などで調査を行い、前年度の「朝鮮-対馬経由「唐兵乱」関係記録の収集と伝達構造分析」の成果を公表することと、今年度のテーマである「明清交替情報の質の分析と流通実態解明」についての作業を進めた。 具体的には、朝鮮-対馬経由「唐兵乱」関係(明清交替)記録の分析を行い、朝鮮から伝わった情報を宗家が江戸へ伝えたルートを確認し、江戸でその情報共有がどの程度なされていたのか分析した。その結果、従来の研究で用いられたで用いられた林春斎・鳳岡父子が編纂した『華夷変態』に収録されていない情報があることがわかり、林家に宗家の情報が全て伝わっていたわけではないことが明らかとなった。つまり、『華夷変態』のみで幕府の対外政策を分析することだけでは不十分であることが解明できたのである(「『華夷変態』と対馬宗家からの「唐兵乱」情報」長崎県立大学国際社会学部『研究紀要』創刊号、2016.3)。そして台湾で起きた朱一貴の情報の日本における流通状況分析から長崎、対馬、薩摩の関係、および社会への海外情報の拡散状況が解明できた(「近世日本における海外情報の入手ルートと質-朱一貴の乱(台湾)情報を事例に-」長崎市長崎学研究所紀要『長崎学』創刊号、2017.3)。この他、海外情報が幕府対外政策に与えた影響に関する分析結果を公表することができた(「寛政九年の対馬情報と幕府の異国船対策」(『日本歴史』826号、2017.3)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長崎県立対馬歴史民俗資料館が平成29年4月から2年間閉館することになり、当初考えていた調査計画を変更して対馬への調査回数を増やさざるを得なかった。しかしそれ以外は計画に従って研究を順調に進められた。
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Strategy for Future Research Activity |
計画していた韓国国史編纂委員会所蔵「宗家文書」の閲覧が諸事情で実施できなかった。そのため早急に韓国調査を行い、史料の収集と分析に取り掛かる。そして北京-福建-琉球-薩摩-江戸ルートの資料収集が不十分であるため重点的に調査を行う。これらをふまえて最終年度であることから、幕府の情報受容と活用を解明するための分析を行い、先行研究とは異なる東アジアの変容への日本の対応の時代的特質を読み解いていく。なお、来年度は大学や自治体が主催する講座で研究成果を発表する予定である。
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Causes of Carryover |
韓国国史編纂委員会のへの調査を計画には入れていたが、長崎県立対馬歴史民俗資料館が平成29年4月から2年間閉館することになり、当初考えていた調査計画を変更した。また、資料整理のアルバイト雇用人数が当初考えていたより少なく済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実施できなかった韓国国史編委員会への史料調査を、平成29年7月末に計画している。この調査をふまえて、その後の韓国への調査を判断する。調査で収集した資料の整理などで、アルバイトを雇用する予定である。
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