2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02883
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Research Institution | The Institute of Politics and Economy |
Principal Investigator |
大岡 聡 公益財団法人政治経済研究所, その他部局等, 研究員 (80366525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植野 真澄 東洋大学, 文学部, 助教 (50446275)
山辺 昌彦 公益財団法人政治経済研究所, その他部局等, 研究員 (90435545)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 空襲被災者運動 / 戦後補償 / 戦後処理 / 戦争観 / 戦争記憶 / 空襲史 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は研究史料の収集・整理に重点を置いた。かねてより散逸が危惧されていた空襲被災者運動関係団体の史料群の幾つかを保全・収蔵することができた。一部の史料については整理が完了し、目録を刊行した。また定例の研究会を開催して、情報を共有し研究企画に共同で当たるとともに、個別研究報告を行って、研究を深めた。具体的には以下のとおり。 (1)東京における最初の空襲被災者運動団体の発足に関与した清岡美知子氏の史料の寄贈を受けたほか幾つかの史料群を収集、分析を進めた。これまで収集したものも含め、整理済みの史料について『空襲被災者運動関連資料目録1』を刊行した。(2)全国戦災傷害者連絡会議の杉山千佐子氏から史料の寄贈を受け、8ミリ映像をデジタル化し、ナレーション起こしを進め、機関誌の総目次を作成した。その目録は次年度に刊行予定である。これらは同団体の運動や戦災傷害者の実態についての研究の基礎史料となる。(3)名古屋空襲訴訟原告代理人の福島啓氏弁護士の裁判資料(立命館大学所蔵)を撮影し、これまで作成されていなかった詳細目録を独自に作成した。(4)全国の空襲記録運動団体等にアンケートを行い、各地における空襲被災者運動の現状や史料の所在について調査した。(5)研究会を6回開催し、情報共有と研究の進め方の議論を行ったほか、毎回の研究発表を通じて研究を深めた。なお外部から計2名の報告者を招いた。 以上の史料発掘・収集と分析により、(1)錯綜する運動団体の系譜について、見通しをつけることが可能になった。特に70年代に活発化した運動の前提として、60年代の諸団体の叢生があったことがわかった。(2)全国戦災傷害者連絡会議の映像を通覧し、運動スタイルや戦災傷害者の生活実態がよくわかった。当該運動が作品性の強いこうした映像を制作し活用したことの意味について考察することは今後の課題となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)ご高齢の運動当事者の方々から情報や史料の提供をうけ、聴きとりに応じていただけたことで、東京の運動について予想より多くの成果が得られた。 (2)これまで長期にわたり信頼関係を築き、交渉を続けてきた全国戦災傷害者連絡会議の杉山千佐子氏やその支援者から、ようやく大量の史料の寄贈を受けることができた。これも大きな成果であった。 (3)全国の空襲記録運動団体へのアンケート調査で、各地の空襲被災者運動団体の現状を調査したが、不明との回答も多く、想像以上に諸団体の活動停止・解散が進んでいる現状がわかった。 (4)一方で、東京、横浜、名古屋以外の運動団体について、手がかりが少なく、調査を進めることができなかった。さらに調査をすすめる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に収集した史料の整理を継続し、資料目録を制作・刊行する。これらの基礎史料の分析を進め、敗戦直後から1980年代までの運動の展開過程について概観するとともに、いくつかの論点について分析を深めたい。特に日本人の戦争観や社会運動の変容との関係で、1970年代の運動の特質を明らかにすることに努めたい。またヨーロッパや中国における同様の運動との比較の中で、日本の運動の特質を捉えることに留意する。 本研究の成果の中間総括・公表、そして収集史料の公開と利用の促進という意味を込めて、年度末に「日本の空襲被災者運動の歩み」(仮称)という展示会と記念講演会(ないしはシンポジウム)を開催する予定である。 本研究プロジェクトの最終成果物として、資料集の刊行を企画している。興味をもっている出版社もある。本年度は資料集の企画を詰めるとともに、収録史料の選定や翻刻を進めたい。
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Causes of Carryover |
中間段階で物品費や外注費(8ミリ映像や機関誌のデジタルデータ化の外部委託)が、当初見込みより膨らむことが予想されたため、旅費の消費を抑制したところ、抑えすぎた結果となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画では第二年度の成果発表機会として、公開研究会ないしはシンポジウムの開催を予定していたが、それだけでなく資料展示会を開くことにしたので、そのことで膨張する費用に充当される。
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Research Products
(12 results)