2016 Fiscal Year Research-status Report
近世ベトナムにおける地方氏族:ゲアン地方における統治と対外交易
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15K02889
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
蓮田 隆志 新潟大学, 現代社会文化研究科, 研究員 (20512247)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ベトナム / 近世 / 古文書学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初予定を変更して冬期にタインホア省にて村落調査を行った。その理由は、研究協力者として参加している別科研がタインホア省での調査を予定しており、費用節約や調査効率、現地カウンターパートの疲労軽減などの点で有効と判断したからである。 調査では多数の村落史料を収集し得た。そのうち、ガーソン県ハーズオン社で収集した文書を取材料として、「近世ベトナムの地方社会における治安活動と下級武人」を発表した。16世紀に抬頭した氏族の文書を分析し、17世紀後半から18世紀にかけて、氏族の傍系が治安維持活動の必要性を梃子として、治安維持任務の責任者を世襲化・既得権益化する過程を跡付けることに成功した。近世ベトナムに於ける地方社会と国家との関係を明らかにしたのみならず、傍系氏族の生存戦略を土地の開拓以外の側面で検討した点で新しい。 また、これらの文書は「派」「奉派」「付」といった、これまで殆ど知られていなかった形式の文書を含んでいる点で極めて貴重である。 この他、前年度に収集した史料から得られた知見も含めて次の一般・高校教員向け講演も行った:「人の移動からみる近世の東南アジア」(神奈川県高等学校教科研究会社会科部会歴史分科会高大連携講座「近世のアジアをどのように学ぶか2」)、「ベトナムの村落社会:現代化の中の伝統」((財)新潟県国際交流協会 国際理解講座「アジアを知る!」)。また、重要な基礎研究に関わる書評を1点発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現地調査を実施したが、今まで殆ど知られていない形式の文書を発見することができ、その結果を年度内に論文として発表できた点で、当初想定していた以上の進展を得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
近世ベトナムの文書様式論は辞令書(勅)や外交文書について多少の検討が加えられているものの、未だ殆ど手つかずの状態であり、ベトナム人研究者の業績も皆無である。本年度の調査にて、「派」や「付」といったこれまで検討の加えられていなかった形式の文書と改稿することができた。来年度以降は、これまで検討した「示」形式文書の研究成果を援用しつつ、文書様式論の検討も進めていく予定である。また、そのために村落調査によるさらなる史料収集を図る。
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Causes of Carryover |
国内調査旅費が予定よりも少ない金額で済んだため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の海外調査費に充当する。
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