2017 Fiscal Year Research-status Report
近世ベトナムにおける地方氏族:ゲアン地方における統治と対外交易
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15K02889
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
蓮田 隆志 新潟大学, 現代社会文化研究科, 研究員 (20512247)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ベトナム / 後期黎朝 / 政治史 / 年代記 / 村落文書 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず重要な変更点として、本年度はベトナムでの調査を見送らざるを得なかった。これは代表者の所属先が変更となり、転居その他の作業が発生したために調査期間を確保できなくなったためである。そのため、調査旅費を有効活用するために延長申請を行い、認められた。次年度に繰り越した研究費を使用してベトナムでの調査を遂行することにする。 研究成果としては、「ベトナム後期黎朝の成立」(『東洋学報』99(2))を発表した。後期黎朝成立史に関する従来の定説を覆すものである。主要な論点は、(1)後期黎朝を成立させた主体は従来説の阮淦ではなく、水注鄭氏という別の一族であること、(2)後期黎朝初代皇帝である荘宗は阮淦の傀儡的存在ではなく、むしろ阮淦と対立関係にあったこと、の2点である。 論証の中心は年代記の再検討だが、本科研でのベトナム調査で収集した諸史料とりわけ村落文書も活用しており、過去にこれを用いて発表した研究成果も本論文の主張を支える重要な役割を果たしている。 これまで知られていた年代記の再検討作業と現地調査で収集した村落史料(碑文、族譜、文書)を組み合わせ、その双方に入念な史料批判を加えた上で統合する研究手法によって、これまでの定説を大きく書き替えることに成功した。種々の制約から欧米の研究者が行い得ない村落レベルでの史料収集と日本東洋学が誇る緻密な文献学的史料批判を組み合わせた本科研の研究手法の有効性を証明する成果だと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果の発表は順調に行えたため、この点では順調に計画を遂行できた。しかしながら、不可抗力とはいえ、現地調査が行えずに延長申請をせざるを得なくなったことは事実のため、「やや遅れている」と評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
当初予定していた現地調査を次年度に行う。調査地はハティン省を予定しているが、調査対象としている氏族のご子孫がハノイに居住しているため、ハノイに文物が移転している可能性も含めて事前のアポイントメントに十分に注意を払う。
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Causes of Carryover |
代表者の所属先変更が生じ、調査を予定していた期間に転居を行わねばならず、充分な調査期間が確保できなくなったため。
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