2017 Fiscal Year Annual Research Report
the Study of Local Administration and Society in Chang-Jiang river and Xiang-jiang river basin from the 3rd to the 4th century in China
Project/Area Number |
15K02891
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
安部 聡一郎 金沢大学, 歴史言語文化学系, 准教授 (10345647)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 出土資料 / 長沙走馬楼呉簡 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度はこれまでの研究の総括として、まず郷と丘の位置関係の問題について、第二年度に実施した国際シンポジウムでの発表に基づく成果として単著論文「長沙走馬樓三國呉簡中所見“郷”與“丘”對應關係的再研究」を公刊した。本研究は、『長沙走馬楼三国呉簡・竹簡』第一巻刊行時点で論点となった郷と丘の統属関係について、第四巻以降増加した竹簡出土位置の相互関係に関する情報、ならびに写真版を活用した文字の比較検討手法を適用して再検討するものであり、従来定説化していた、郷を谷筋に沿って存在する地名である後代の「冲」に準えて理解する方向性が史料状況からは困難と考えざるを得ないことを示すものである。単著論考「走馬楼呉簡からみる三国呉の郷村把握システム」では、本研究をもとに、長沙出土の後漢時代簡牘(五一広場簡等)に登場する郷・丘関係を含め後漢・三国期長沙郡地域の郷・丘関係について論じた。 以上の成果、ならびに特に第二年度における地理的状況に関する研究、および国際共同研究加速基金(国際共同研究強化)による長沙滞在期間中に得た知見を踏まえ、国際学会発表として中国魏晋南北朝史学会第十二回大会で「長沙走馬樓三國呉簡嘉禾吏民田家ベツ中所見的“丘”再考察──以畝數/町數數據為線索」を報告した。本発表では、『長沙走馬楼呉簡・嘉禾吏民田家ベツ』に収録された大木簡にみえる佃田の畝数・町数データの分布状況から各丘の地勢を推定し、これに上述成果で得た郷―丘関係のデータおよび長沙周辺の歴史的地理環境を重ね合わせて各丘の位置比定を試みることで、長沙呉簡を後漢・三国期長沙地域の中において理解する方法について現段階でなし得る結論をまとめた。 なお、第二年度から繰り越された使用額を用い、今年度新たに公開された長沙市博物館基本陳列および山東省済南市・山東博物館での特設展示「書于竹帛」の補充調査を実施している。
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