2015 Fiscal Year Research-status Report
中国の渤海史研究草創期についての史学史的研究―金毓黻を中心に―
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15K02892
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古畑 徹 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (80199439)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古市 大輔 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (40293328)
小林 信介 金沢大学, 経済学経営学系, 准教授 (50422655)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 金毓黻 / 渤海 / 静晤室日記 / マンチュリア / 中国東北 / 満洲事変 / 史学史 / 東北アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、計画通りに、主に金毓黻『静晤室日記』の1931年部分の読解と、それにつづけて1933年部分までの読解を進め、研究を一時中断していた『渤海国志長編』執筆の経緯を明らかにする作業を行った。この成果は平成27年度東洋史研究会大会の招待講演で公表され、高い評価を得た。来年度には論文にして『東洋史研究』に掲載される予定である。ただし、東洋史研究会大会後に新たにわかった点もあり、現在、鋭意修正中である。また、この間の成果の一部を使って、従来の中国における『渤海国記』に関する通説を修正し、それを論文にして公表した。さらに、当初より予定されていた研究会は、日程調整がうまくいかず夏の開催はできなかったが、年度末の3月14日に第1回「金毓黻と東北アジア史研究会(仮称)」としてオープンな形でスタートした。(翌日に研究打合せも実施。)オープンにしたために、研究分担者・連携研究者全員のみならず東京・神戸からも参加者があり、今後も継続的・定例的に研究会・打ち合わせ会を実施できる見込みが立った。研究会では、古畑が先の東洋史研究会大会での報告に新事実を加えて報告するとともに、連携研究者である小嶋芳孝氏による考古学的な研究の報告があり、活発な議論が行われた。 研究分担者による基礎作業も進んでおり、古市大輔氏は金毓黻に関する中国の先行研究を整理し直すと共に,彼の出自や経歴・活動(特に,彼の前半生,満洲事変以前の時期)に関する史料データの調査を開始し、同時期にマンチュリアで活動していた政治家や学者のうち,金毓黻と接点のある人物に関する史料の調査・収集も併せて進めた。ただ,いずれの調査もその初期段階にあるため,現時点ではその結果を公表するまでには至っていない。小林信介氏は「満州」をめぐる情勢の日本に関する部分の基礎的調査を進め、その作業成果の一部を自著に関係する論考のなか、および研究発表のなかで公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
成果は順調に上がっており、そのメインの成果の論文としての発表は来年度送りとなったものの、学界で最も権威のある雑誌への掲載が決まったうえでの発表時期の遅れなので、問題はない。また、研究会の開催自体は遅れたものの、年度内に実施でき、定例化のめども立った。それらを総合すると、おおむね順調に進展していると進捗状況を判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
ほぼ順調に進捗しているので、今後も当初予定通りに次のように進める。 平成28年度は、前年度の成果を論稿として発表するとともに、4つの基礎作業(①『静晤室日記』等による金毓黻の渤海史研究の経緯の正確な跡付け、②『静晤室日記』及び「満州」関係の中国・日本の諸史料による金毓黻の人間関係の正確な跡付け、③1930年代前後における中国東北地方への中国歴史学界の問題関心の変化の正確な跡付け、④現在の中国における渤海史研究の動向の正確な跡付け)のうちの②③④を中心に研究を進める。 平成29年度は、4つの基礎作業の仕上げに入るとともに、2つの検討作業(①1930年代前後の「満州」をめぐる政治情勢との関係及び中国ナショナリズムの動向との関係の史学史的考察、②金毓黻の影響の抽出による中国の渤海史理解の特質の明確化と日中の渤海史研究の議論が噛み合うような問題の立て方の検討)に研究の重点を移し、平成30年度には2つの検討作業を中心に、ここまでの研究成果を報告書にまとめていく。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り使用したが、消耗品等を購入した際の見込み額と実価格との差異が、端数として残ってしまったものである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰越は少額なので、当初予定通りに使用する。 物品費は、研究に必要な図書経費と消耗品、旅費は代表者・研究分担者の調査旅費ならびに連携研究者の金沢の研究会への旅費、謝金は院生等による資料整理のアルバイト代等に充当する計画である。
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