2015 Fiscal Year Research-status Report
20世紀中国における「民主」とは?─自由と平等の相剋から考える
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15K02898
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水羽 信男 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (50229712)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 民主主義 / 自由主義 / 中国 / 雷海宗 / 林同済 / 羅隆基 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は中華民国前期(1928年~1937年)における自由主義的な知識人、すなわち政権党である中国国民党、そして国民党に対して革命闘争を行なった中国共産党という、二つの一党独裁を志向した政党とは異なり、個の尊厳を守ることを第一の課題するリベラルな思想的な立場から、言論活動を展開した人々を取りあげて研究を進めた。 当時は国民革命(1924年~1928年)が、当初の国共両党の合作に基づく政治路線の挫折、すなわち国民党の共産党に対する排除の後の思想的混乱期にあたり、また日本との軍事的な衝突の前夜でもあり、「救国」をめぐる様々な言論が出現していた。その「救国」論の前提には、対内的には中国社会をどのように理解するかについての論争が展開され(中国社会史論戦など)、ワシントン体制下にあった国際関係に対しても、冷徹な分析の必要性が強調された。 私はこうした論壇のなかでも、とりわけ雷海宗・林同済、さらには羅隆基・王造時など、北京や上海を活動の拠点とした大学人・ジャーナリストに着目した。彼らはともにアメリカ留学を経験しており、当時の中国の論壇でもリベラルでユニークな議論を展開していた。私は彼らの民主主義思想の特質を、自由と平等の緊張関係のなかで考察した。 昨年度は、そのための関連史料を購入するとともに、上海市档案館などで史料収集を行なった。また研究の内容の一部を含む論文を石井知章編『現代中国のリベラリズム思潮』(藤原書店)および深町英夫編『中国議会100年史』(東京大学出版会)に掲載し、台湾における国際学会でも報告した。さらにその内容については、連携研究者である金子肇(広島大学)および笹川裕史(上智大学)からのコメントも参考にして検討を加えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である昨年度は、大学における校務などにより、研究のためのエフォートを抑え気味にせざるをえない時期もあったが、必要な史料を購入し、最低限の海外史料調査も実施して、論文2編を執筆し国際学会で1回の報告を行った。したがって最終的には、おおむね順調に研究を進めることができたと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従って、中華民国後期(1937~1949年)へと研究を進展させ、総力戦体制と民主主義の関連についても考察を深める予定である。
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Causes of Carryover |
校務の関係で一部計画が遂行できず、そのため若干の残金が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2,000円弱のため、本年度の消耗品費に合算して使用する予定である。
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Research Products
(3 results)