2016 Fiscal Year Research-status Report
20世紀中国における「民主」とは?─自由と平等の相剋から考える
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15K02898
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水羽 信男 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (50229712)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 民主主義 / 自由主義 / 雷海宗 / 費孝通 / 兪可平 / 戦国策派 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は考察対象時期を一昨年度の中華民国前期(1928-1937)から日中戦争時期(1937-1945)へ進め、リベラル派知識人についての検討を深めた。 具体的には、日本占領下での研究・教育を嫌って、奥地の国民党統治区へ移転した北京大学・清華大学・南開大学の三つの大学のスタッフにより、雲南省昆明市で組織された西南連合大学の雷海宗や費孝通らをとりあげた。彼らは国民党や共産党とは異なる第三勢力の自由主義者で雑誌『戦国策』などに寄稿し、「戦国策派」とも呼ばれた。そのほとんどがアメリカやイギリスへの留学を経験した知識人で、地政学など最新の学問を積極的に学び、中国の民主化のために総力戦下にある中国社会の特質や、当時の国際情勢などを論じた。 また現代中国の民主主義論を検討するために、胡錦濤のプレーンともいわれた兪可平の言説を分析した。すなわち、1930~40年代の中国の民主主義思潮史を現代的な問題関心から問い直すための基礎作業として、今日の中国の民主主義をめぐる言説空間を分析したのである。その結果、中国固有の政治文化と西洋起源の民主主義思想とをいかにして接合するのか、という極めて困難な課題に対する、中国の自由主義者の知的営為の特質の一端が明らかになった。 昨年度は「戦国策派」を含む当該時期の自由主義者の言論活動を分析するための史料を積極的に購入するとともに、上海市档案館での史料調査も一昨年度に引き続き継続した。また連携研究者である金子肇(広島大学)と笹川裕史(上智大学)との研究交流も、これまで同様、継続した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近年の大学のおかれた状況にも関わって、研究のためのエフォートを維持することは極めて困難であった。とはいえ、研究に必要な史料の購入や海外における史料調査は、なんとか実施することができた。その結果として、昨年度の実績(論文2編、国際学会での報告1回)を上回る業績をあげた。したがって「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画に従い、中華人民共和国時代へと分析を進める。ただし研究の進捗にあわせて本年度は、最終年度までを見通して改めて研究計画の妥当性について確認する。
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Causes of Carryover |
本務校での校務により、国内での史料調査が予定通りに行えなかったことが最大の要因である。また消耗品費の執行の見込みに狂いが生じたことも影響している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
昨年度の経験に鑑みて、早め早めに予算執行計画を立てる必要があると考え、今年度は新たに出版された公刊史料の購入や国内外の史料調査について、綿密な計画に基づく対策を講じている。
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Research Products
(6 results)