2017 Fiscal Year Research-status Report
20世紀中国における「民主」とは?─自由と平等の相剋から考える
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15K02898
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
水羽 信男 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (50229712)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中華民国 / 中華人民共和国 / リベラリズム / 民主 / 基層社会 / 費孝通 / 何永佶 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は民国時代の知識人のうち、1920年代に米国や英国へ留学し、帰国後はアカデミズムで活躍した費孝通など日中戦争時期には昆明を活動の拠点とした知識人の中国社会論を本格的に分析した。それは本科研の目的の一つとした「中国知識人の民主主義論の形成の「母体」ともいえる中国の基層社会に対する理解」を深めるための作業であった。分析に際しては、日本における社会科学の発展(たとえば日本資本主義論争)の影響を強く受けた左派論壇の中国社会性質論争などの成果と、昆明の知識人の基層社会論との比較を行い、彼らの議論が先行する左派論壇の認識を批判的に克服するものであったことを明らかにした。そこには文化人類学など米国・英国を通じて得た、新たな知の体系の影響が大きかった。 同時に、昆明の知識人の国際情勢観についても検討を加えた。その結果、パワーポリティクスの視点から、米ソ冷戦期における中国の発展の道を冷静に考察するとともに、先進資本主義国への批判を前提として、中国の民主化を模索する姿を明らかにした。 また本研究のもう一つの目的である「1949年革命で中国史を断絶することなく」理解するという課題に取り組むために、1957年の「百家争鳴・百花斉放」と呼ばれた中国共産党の言論の自由化政策が、一転、「反右派闘争」という形での言論弾圧に転換することの意味を中国における民主主義思想の深化という側面から論じ、中国の「民主」の可能性と限界について、初歩的に総括した。 史料収集については、平成29年度も民国時代に創刊された新聞・雑誌を精力的に購入し、研究の基盤を整備するとともに、台湾の中央研究院近代史研究所档案館において史料調査を行った。またこれまでと同様に、連携研究者である金子肇(広島大学)と笹川裕史(上智大学)との研究交流を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来、平成29年度に計画していた海外の研究者との交流が、先方の日程の問題もあり、実現できなかった。そのために当初の予定よりも研究の進捗状況はやや遅れていると言わざるを得ない。しかしその他の面では、概ね順調に研究を進めることができ、平成28年度とほぼ同様の成果をあげることができた(論文3編、国際会議での報告1回)。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は本科研の最終年度であり、研究の目的である「中国の民主主義思想の特質を自由と平等の相剋から解明する」という課題について、一定の結論を得るべく努力する。具体的には、代表者がこれまでとりあげてきた章乃器・施復亮・羅隆基に関する研究成果に、本科研で本格的に検討した雷海宗・費孝通・林同済らの思想と行動に関する分析を加味する。そのために、平成29年度に実施できなかった海外の研究者との交流についても実現を目指す。
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Research Products
(4 results)