2018 Fiscal Year Annual Research Report
Conflicts and order-keeping in the Western border between the Russian and Qing Empires
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15K02914
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
野田 仁 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 准教授 (00549420)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 中央アジア / 新疆 / 国際関係 / 民族 / 裁判 / 慣習法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ロシア・清の2帝国の西方境界、とりわけ中国新疆・カザフスタンにまたがる地域に注目し、そこで19 世紀後半から20 世紀初頭にかけて設定されていた司法制度を分析することから、この地域に成立していた国際的な秩序の形成過程を明らかにすることであった。最終的に国際集会裁判として結実した両国間の紛争解決手段の成立過程、またその具体的な司法手続きから、両帝国間に位置した中央アジアの諸民族集団をも交えた秩序形成の実態を示し、また各集団の帰属意識にも留意した。 最終年度として、ロシア側の意図を中心としてこれまで収集した資料に基づいて情報の最終的な整理を行った。またその際、別課題の調査(ロシア帝国外交文書館)において偶然発見した国際集会裁判をめぐるロシア政府内の議論についての資料もあわせて利用することができた。結果として、本研究全体を通じて、少なくともロシア帝国側は、地域秩序の安定を優先すべく帝国法ではなく現地の法体系を採用することを考え、またそのことが対手となる清朝側にとっても不利にはならないと想定していたことが示された。 このような意図を背景に成立した国際集会裁判の制度は改変を伴いながら、革命による中華民国成立後も露中境界の紛争解決手段として実効性を持っていたことも本研究から明らかになった。断片的に残されている判決台帳からは、民族集団の枠を越えて紛争解決が図られていたことが分かる一方で、各集団の帰属意識については不明な点もまだ多く、引き続き課題としたい。ここまでの成果のとりまとめとして、カザフ遊牧民の紛争解決の歴史および露清間の国際集会裁判制度の運用について、それぞれ論文化の作業を進めている。
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Research Products
(6 results)