2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K02938
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
高田 京比子 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (40283668)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 河川 / 都市 / 準都市 / イタリア史 / ヴェネト / 水 / アルプス史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はイタリアのヴェローナ大学からジャン・マリア・ヴァラニーニ教授を招聘し、関西比較中世都市研究会の共催のもと日本史のコメンテーターを御願いして、研究会をおこなった。ヴァラニーニ氏の講演は、ヴェローナとアディジェ川の関係を軸に、山岳部の領主権力とヴェローナの基本的共存関係、平野部の諸都市、特にパドヴァなどの対抗関係とヴェネツィアとの比較的良好な関係を明らかにし、地域の秩序と河川を考える上で非常に有益であった。アルプスからポー=ヴェネト平野にいたるアディジェ川経済圏の要としてのヴェローナの役割、複雑な水系が政治的紛争の中でヴェローナに有利に影響したこと、などが講演から浮かび上がった。日本史のコメントもヴァラニーニ氏の講演に対応して、畿内の淀川交通を、木材輸送を軸とする山岳部との関係、平野部における船の通行と農業の関係等のなかでとりあげ、比較史的示唆に富むものであった。これらの知識を貯えた上で、本年は昨年度執筆できなかった論文「河川が結ぶ北イタリア」を執筆した。ここでは、ポー川に関する史料をいくつかとりあげ、ヴェネツィア、フェッラーラ、ヴェローナ、マントヴァ、クレモナなどの都市が川を巡って互いに関係しあい、紛争や交渉やその結果としての協約を通じて、流域の交通・秩序を維持していた様子を概観した。またアゾロの調査に基づく成果をまとめた研究書に、翻訳1編、論文1編を寄稿した。ここでは、ブレンタ川沿いのバッサーノ・デル・グラッパを取り上げた。現在、初校を校正中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、ヴァラニーニ氏の講演会を行って有用な議論をおこなうことができた。ただ、その成果をどのような形で刊行するかについては、現在、検討中である。また本年度は2本の論文を執筆する等、アウトプットの面でも成果があった。30年度招聘予定のピリッロ氏とも順調に準備をすすめている。
|
Strategy for Future Research Activity |
30年度は、2018年8月にローマで開かれる国際学会で発表することが決まっている。内容はポー川の河川通行をめぐる、クレモナ、フェッラーラ、ヴェネツィアの協約を検討することである。このテーマはすでに初歩的な部分を2014年の九州史学会で発表しているが、今回はクレモナ都市内部の動向等、さらに掘り下げたペーパーにする予定である。12月にはピリッロ氏を招聘して、ヴェネト地方との比較としてトスカーナ地方アルノ川の河川と紛争についての講演を御願いする。今年度の研究を通じて、河川通行や物資の流通と政治的紛争を軸に北中部イタリアの都市間関係、地域秩序を見直して行く試みは、非常に有望なものだとの認識をあらたにしたので、限定した地域で掘り下げた考察を行うと同時に裾野を広げることも重要だと感じている。
|
Causes of Carryover |
3月末の韓国海洋大学での学会発表への出張(3泊4日)で、宿泊費、日当が先方から支給されたため。また年度をまたぐ出張となったため。繰越金は一部はすでに4月1日分の旅費として使用された。残りはわずかであるが、書籍代等にあてる予定である。
|
Research Products
(3 results)