2015 Fiscal Year Research-status Report
皇帝フェルディナント1世の教会政策と帝国国制の研究
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15K02943
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
渡邊 伸 京都府立大学, 文学部, 教授 (70202413)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宗教改革 / 宗教的寛容 / 帝国 / 宗派化 |
Outline of Annual Research Achievements |
●初年度の計画に従い、1555 年のアウクスブルク宗教平和、1559 年のアウクスブルク帝国議会、1566 年のアウクスブルク帝国議会の史料に関する基本史料集、および1557 年レーゲンスブルク帝国議会関連文献を入手した。 ●教皇庁側の記録として、教皇特使報告書集の関連史料集、またザクセンとバイエルンに関する史料集も入手した。 ●H27 年度は、これらの史料・文献の検討から、とくに皇帝カール5 世からフェルディナント1 世への権限委譲と、アウクスブルク宗教平和の成立過程について検討を進めた。 またフェルディナント1世と教皇庁の関係に関する専論を入手し、これに基づき、関連資料の所在を確認した。現在までの検討により、1555年の時点でカール5世からの権限委譲がどこまで行われていたか、論争があり、確定できていないが、公会議論をめぐる教皇庁との交渉を分析することで、実質的な委譲時期を推定できると見通しを立てることができた。 ●今回の調査において、アウクスブルク宗教平和の帝国法としての効力、またその後の帝国議会議決の実際の効力について、現時点では正面から取り上げた研究を確認できていない。帝国国制を捉えるためには、とくに帝国諸身分の教会政策からも具体像をつかむ必要がある。このため、ニュールンベルク、シュトラースブルク、ザルツブルクの教会巡察記録を入手し、検討に入った。いずれも、巡察と帝国議会の状況とを突合することで考察する予定である。 ●帝国情勢に関する史料は検討すべき材料が多いため、まず個別の教会巡察から1555年以降の帝国議会議決の効力を考察し、研究報告にまとめ、公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
●初年度の主要課題である、関連史料の収集について、予定していた既公刊史料集を中心に入手することができた。 ●教皇庁と神聖ローマ皇帝との関係について、従来、フェルディナント1世の政治姿勢をエラスムス主義から把握しようとする研究が中心であったが、公会議論を通じて捉え直すことが課題である。まず権限委譲問題を捉える手かがりとすることができた。 ●帝国議会議決の法的効力について、帝国諸身分の教会政策から具体的に把握する必要性を確認し得た。
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Strategy for Future Research Activity |
●第2年度は、引き続き、1556/57 年のアウクスブルク・レーゲンスブルク帝国議会および1559 年のアウクスブルク帝国議会、1566/7 年のアウクスブルク・レーゲンブルク帝国議会に関する史料の調査・収集を進める。また、ドイツ国内の政治情勢とハプスブルク国内の政治情勢については、バイエルンのアルブレヒト、ファルツのオット・ハインリヒに関する史料集が公刊されており、これらを入手して検討する。 ●史料が未公刊の1556/57 年のアウクスブルク・レーゲンスブルク帝国議会における公会議問題の史料について、ウィーン国立公文書館の帝国議会記録であるMEA・RTA 部門、書簡関係MEA・Kor部門に当該時期の史料があることを確認しており、ウィーン大学歴史学部Fuchs 講師に情報提供を受けて、これらの調査討議に焦点を当てる。 ●帝国議会および教皇庁との関係に関する史料集は未だ公刊されていない。多くは、上記、ウィーン国立公文書館の教会関係MEA・GKS部門にあり、またマインツの市立公文書館所蔵の大司教座文書・大聖堂参事会記録にも収蔵されている模様であり、現地にて調査する予定である。
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