2016 Fiscal Year Research-status Report
皇帝フェルディナント1世の教会政策と帝国国制の研究
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15K02943
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
渡邊 伸 京都府立大学, 文学部, 教授 (70202413)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 宗教改革 / ドイツ史 / キリスト教 / 国制史 |
Outline of Annual Research Achievements |
●本年度は、1556/57 年のアウクスブルク・レーゲンスブルク帝国議会および1559 年のアウクスブルク帝国議会、1566/7年のアウクスブルク・レーゲンスブルク帝国議会に関する史料の調査・収集を進めた。 ●ウィーン国立公文書館にて、1556/57 年のアウクスブルク・レーゲンスブルク帝国議会における公会議問題の未公刊の史料について、帝国議会記録であるMEA・RTA 部門、書簡関係MEA・Kor部門において調査を行い、該当する史料を閲覧、検討した。 ●マインツ市立公文書館にて、大司教座文書・大聖堂参事会記録から帝国議会および教皇庁との関係に関する史料を調査した。 ●以上の検討をもとに、16世紀前半における帝国議会議決の法的効力の変遷を考察した。 ●帝国議会議決の実際の法的効力について、ニュールンベルクとシュトラースブルクなどの巡察記録をもとに考察し、宗教改革五百周年の記念論文集『ドイツ宗教改革:記憶と忘却の五〇〇年』に、第四章「宗教改革の磁場:都市と農村」と題して寄稿した(ミネルヴァ書房2017年10月刊行予定)。 ●また、Braunschweig大学Georg-Eckert-Institutから刊行予定の論文集Die Reformation in europaeischen Geschichtskulturenに、日本の教科書記述にみる宗教改革像に関する論文を執筆・寄稿した(2017年10月刊行予定)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
●今年度の成果として、宗教改革期の帝国議会議決が、とくに公会議に関する規程についての論議を通じて次第に法的根拠となっていったことが確認できた。 本来、公会議がキリスト教界全体にかかわる問題であるにもかかわらず、公会議を信者共同体のものとするプロテスタントは、ドイツの教会共同体のものととらえて議決に位置づけた。また、カトリックも、シュマルカルデン戦争以降、ドイツ国内問題として議論するようになっており、これにはとくにフェルディナントI世がこのような理解を支持するようになったことが大きく影響したという見通しを得ることができた。 ●関連して、都市が宗教改革を導入するに当たって、帝国議会議決、とくにその平和規程の採択を踏まえて、教会巡察を実施し、それぞれの教会規程をもうけていること、領域や近隣農村の再洗礼派の取り締まり、周辺領主との協力・対立関係も帝国議会議決と帝国最高法院を踏まえていることを確認できた。この成果を宗教改革五百周年の記念論文集『ドイツ宗教改革:記憶と忘却の五〇〇年』に論文として寄稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
●最終年度である平成29年度は、前年度までに収集した史料・文献をもとに考察をすすめ、これに基づき研究の整理・総括と成果の公表を行う。 ●前年までに収集した史料とデータの整理・分析を進め、1555 年アウクスブルク帝国議会から1566年シュパイアー帝国議会に関する研究成果を総括し、公表の準備を行う。 ・帝国議会での交渉・討論の考察から、公会議を中心とする法制・国制、ならびに事前交渉などにおける神学者から顧問官への比重の移動を明らかにし、目的に示した課題を具体化する。 ●平成21 年~24 年度の基盤研究(C)研究成果と合わせ、ドイツ宗教改革期の帝国議会を中心とする信仰問題から新たな帝国像を描き、帝国での宗教改革を規定した歴史的要因について考察を行う。 ●その成果を、書籍として公刊し、社会への還元を果たす予定である。
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