2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02945
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Research Institution | University of Nagasaki |
Principal Investigator |
谷澤 毅 長崎県立大学, 経営学部, 教授 (00288010)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ハンザ / ブレーメン / キール / 軍港都市 / 移民 / ドイツ / 港湾都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は二つの側面から研究を進めた。 一つは19世紀のブレーメンに関するもので、ハンザ都市としての伝統を踏まえ、ブレーメンが港湾都市、貿易都市として躍進する姿を描き出したものである。人口や海運規模を検討する際にはハンブルクとの比較を試み、人口面でブレーメンとハンブルクとの間には大きな差があったものの、海運規模の面では、ハンブルクのほうか規模が大きかったとはいえ、人口規模に見られたような大きな差はなかったことを確認することができた。また、この研究では外港都市ブレーマーハーフェンを舞台とした移民の輸送にも光をあて、この外港と合わせてブレーメンが当時のヨーロッパを代表する移民の移出港であることが確認された。ブレーメンを利用した移民の数はハンブルクのそれを上回っていたのである。この研究の成果は、国際商業史研究会で刊行される論文集に収められ、平成28年度中に刊行される予定である。 もう一つの研究は、本来予定していなかったものであるが、ハンザ衰退後のハンザ都市の多様性を考察するうえで、あらためて取り組んだものである。それは、ハンザ都市キールの19世紀後半から20世紀前半にかけての都市発展と貿易に関する研究である。ハンザ都市キールは、ドイツ統一に際して帝国軍港に指定されたことから軍港都市として急速に海軍施設を拡充して都市規模を拡大させていった。しかし一方で、キールは貿易港として貿易活動の舞台としても発展が期待されていた。そこで、このテーマでの研究の中心は、軍港と商港の機能のぶつかり合いに置かれ、商港としてのキール港が、軍港都市であることによりどのような制約を受けたか、という観点から研究を進めた。この研究の成果は、軍港都市史研究会で刊行される論文集に収められ、現在編集作業が進められている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度は、本来予定していなかった近代キールの発展を急遽研究項目に取り入れたことにより、このテーマに関する諸文献の読み込みと論文執筆のために、ある程度の時間を割くことになった。とはいえ、ハンザ衰退後のハンザ都市に関して、軍港都市という発展のパターンがあったことが改めて確認できたことから、ハンザ都市の多様性を知るという点で、今後の研究の幅を広げることができたのではないかと考えられる。 一方、ブレーメンに関する論文の取りまとめの過程では、ハンブルクとの比較を念頭に調査、執筆を進めたため、ハンブルクに関しても人口動向や貿易・海運の規模に関して基礎的な知識を得ることができた。ブレーメンとハンブルク双方に関して都市規模や貿易に関する基本的な知識が得られたことから、今後手掛けようとするリューベックの都市史や貿易史に関する研究の方向性も徐々に定まりつつある。 また、近代キールに関して文献を読み込んでいく過程で、ドイツ海軍が海上世界に向けたドイツの勢力拡大を描き出す際にハンザの記憶を活用し、海軍創設以来の歴史の浅さを補うためにハンザの歴史を援用したということを知ることができた。これはハンザ衰退後のハンザに関する記憶の継承やハンザに関する歴史観の変化を考えるうえで大きなヒントになった。このような、今後の研究の見通しを得ることができたことも昨年度の研究成果の一つとして挙げることができる。 以上のような成果が得られたことにより、昨年度の実績を(2)と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年に研究を進め、まとめた成果が二つの論文となって刊行される。一つはブレーメンに関するもので「ハンザ都市ブレーメンの近代 - 「海のドイツ」の窓口として」というタイトルで、国際商業史研究会で刊行する論文集に掲載が予定されている。もう一つはキールに関するもので、「ドイツの軍港都市キールの近現代 - ハンザ都市・軍港都市・港湾都市」というタイトルで、軍港都市史研究会で刊行する論文集『軍港都市史研究 第7巻 政治経済編』に掲載されることが予定されている。また、この論文の内容については、同研究会が主催する7月の研究報告会で、その要旨が報告される予定である。 研究内容に関しては、まず近代のリューベックに関する研究を本格的に軌道に乗せる。筆者はこれまで18世紀以降のリューベックを取り上げたことはなかったので、まずは基本文献、概説書により、リューベック史の流れを把握し、それを踏まえながら港を中心としたインフラ整備や人口動向、また貿易、海運の面などから港湾都市としての変化を汲み取っていく。その際、ブレーメンとハンブルクに関する知見をもとに、比較史的な考察を随所に取り入れ、それをもとに、ハンザ都市を拠点とする世界規模の通商ネットワークの形成を見ていく。 また、本年度からハンザ衰退後のハンザ概念の継承とナショナリズムの高まりのなかでのハンザ・イメージについての検討を手掛ける。まずは、ハンザ史学会の設立のいきさつについて確認するとともに、『ハンザ史学雑誌』のバックナンバーに随時目を通し、各論文の論調や分析視角などからハンザの扱われ方を検討していくこととする。
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Causes of Carryover |
ドイツにおける現地視察と資料収集を予定していたが、前年に引き続き学内の役職(学生部長)をあてがわれたので長期間の出張が不可能となった。それゆえ、その分予定より多くの文献を購入したが、全額は執行できなかったので次年度使用額が生じることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度も引き続き役職をあてがわれている。ドイツで現地視察と資料収集を実施することを予定しているが、昨年と同様、もしドイツ出張が不可能となれば、その分を文献・史料の購入に当てて研究の充実を図ることにしたい。
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Research Products
(2 results)