2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K02953
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
池上 佳助 東海大学, 文学部, 准教授 (40307294)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホロコースト / 記憶研究 / 北欧現代史 / 第二次世界大戦史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度の前半は、前年度の予備調査で入手したアウシュヴィッツを生き延び、戦後帰還したノルウェー・ユダヤ人の証言録、ノルウェーでのユダヤ人一斉検挙、強制移送に関する史料・文献などを読解しながら研究ノートの作成に従事した。右については、後述するドイツでの調査、特にノルウェー・ユダヤ人が「死の行進」の果てに辿り着き、最後に解放されたブーヘンヴァルト収容所の資料と合わせ16年度中に論文を纏める予定である。 年度後半にはドイツでの調査に関する事前準備と3月に2週間の現地調査を実施した。調査目的の第一点目は、戦後70年を踏まえてドイツでナチズム、ホロコーストの記憶がどのように表象されているかをベルリンの博物館/記念館や追悼メモリアル等を訪ねて調べること、第二点目はノルウェー・ユダヤ人が収容されたブーヘンヴァルト強制収容所及びナチ占領下で拘束されたノルウェー抵抗運動家が収容されたザクセン・ハウゼン、ベルゲン・ベルゼン、ダッハウ各強制収容所で関連資料を収集することにあった。 前者については、ドイツ歴史博物館で戦後70周年の特別回顧展が開催(訪問時には終了)、ミュンヘンに「NS文書センター」が新たに開設されるなどナチの暴力・戦争の背景やその展開が詳細に語られ、また、占領国や被害者の視点からドイツの加害が客観的に展示されていた。ホロコースト関連では、ユダヤ人に加え、近年「忘れられた犠牲者」としてロマ人、ホモ、安楽死させられた障害者、ソ連兵捕虜の追悼記念碑が数多くつくられ、ホロコーストの多様性が強調されていた。後者については、強制収容所自体が加害/追悼/記憶の継承の場として再定義され、屋外の遺構、モニュメントにとどまらず文書・映像・写真資料の展示施設を付設し、総合的な資料記念館として整備されてきており、若い世代のドイツ人が数多く訪れていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ドイツでのホロコーストに関する資料館・強制収容所・記念碑等に関する現地調査が校務の関係で年度末の3月となっため、調査資料の整理・調査報告の作成が若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は前年度のドイツでの調査を踏まえた論文の執筆を行うとともに、大学の夏期休暇を利用してポーランドおよびハンガリーでの現地調査を実施する。 ポーランドではノルウェー・ユダヤ人が強制移送され、その多くが殺害されたアウシュヴィッツ絶滅収容所(基幹収容所に加え、ビルケナウ、モノヴィッツを含む)やトレブリンカ収容所での調査を中心に、ワルシャワのユダヤ博物館やゲットー記念碑での関連資料の収集、現地研究者とポーランドにおけるホロコーストの記憶の変容について意見交換を行う。また、ハンガリーのブタペストにあるユダヤ博物館、ハンガリー・ユダヤ人の救出に尽力したスウェーデン人外交官ワレンベリの記念館等を訪れ、関連資料の収集を行う。
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Causes of Carryover |
ドイツでの調査が年度末の実施となったことにより、出張旅費関係の費用が為替の変動、燃油税の引き下げにより安くなったため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度に予定するポーランドでの調査の資料購入に充当することを予定。
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