2017 Fiscal Year Annual Research Report
Memory of Holocaust in Norway and Denmark
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15K02953
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
池上 佳助 東海大学, 文学部, 准教授 (40307294)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホロコースト / 記憶研究 / 北欧現代史 / 第二次世界大戦史 |
Outline of Annual Research Achievements |
①2015年度及び2016年度はノルウェー・ユダヤ人のホロコースト体験と右に関する戦後ノルウェーの記憶の変容について調査・研究を行った。ホロコーストからの生還者の証言・回想録、ノルウェー秘密国家警察の公文書等を読解・分析し、ノルウェー・ユダヤ人の財産没収、逮捕、国内での一時収容、アウシュヴィッツへの強制移送にノルウェー人の警察官、監視員、運転手などが自発的に関与していたがことが明らかになり、自らをナチス占領の被害者と位置付けていたノルウェー人がユダヤ人問題では加害者でもあったことを指摘した。次世代への戦争の記憶の継承では、被害者でありながら加害者にもなりえた複眼的な視点と被害者の痛み・苦しみに共感し得る追体験の模索の必要性を提起した。
②最終年度の2017年度前半はデンマーク・ユダヤ人、とりわけ隣国の中立国スウェーデンに脱出することが出来ず、ドイツ保安警察に逮捕されテレージエンシュタット強制収容所に移送されたユダヤ人の体験とデンマーク政府・赤十字の支援等について、現地調査及び史料収集に努めた。年度後半はデンマーク及びドイツの公文書史料、体験者の回想録・証言を読み解き、テレージエンシュタットでの体験を明らかにした。戦後語り継がれてきたデンマーク国民によるユダヤ人のスウェーデン脱出支援についての「大きな物語(マスター・ナラティヴ)」に欠落する視点、つまり主体者をデンマーク国民ではなく、ユダヤ人として描く視点の転換が必要なことを考察した。
③上記①の研究成果としては2本の論文に纏め、所属機関の紀要に発表した。②については学会誌に論文を投稿し、現在査読の審査中であるが、2018年内に公刊される予定である。さらに、もう1本論文を作成したうえで、4本の執筆論文をもとに「北欧におけるホロコーストの記憶」として編集し直し、今回の研究プロジェクトの成果として書籍のかたちで出版する予定である。
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