2017 Fiscal Year Annual Research Report
Basic research on the social functions of the act of Cursing in the Greek-Roman World
Project/Area Number |
15K02956
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Research Institution | Musashino Academia Musicae |
Principal Investigator |
志内 一興 武蔵野音楽大学, 音楽学部, その他 (60449288)
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Project Period (FY) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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Keywords | 古代ギリシア・ローマ / 古代世界の宗教 |
Outline of Annual Research Achievements |
「古代ギリシア・ローマ世界における呪詛行為の持つ社会的効用についての基礎研究」と題して研究を進めてきた。古代ギリシア・ローマ社会において、コミュニティ内に発生した緊張や紛争をどのように緩和したり、あるいは解決したりしたかの方法理解には、従来は法に基づく「公的・<合理的>」な解決策(公判・陳情書手続き)の図式が重視されてきた。だが各地から多数発見されている「呪詛文書」は、公的なレベルに浮かび上がることの稀な、「私的・<非合理的>」緊張関係の緩和方法が、古代社会において重要な働きをしていたことを示唆しているように思われるのである。本研究は、この非合理的側面に注目して、古代ギリシア・ローマ社会における紛争解決を、これまでとは違った視点から理解するための新たなモデルを提案することを目的として進めてきた。三年にわたる補助を活用することで、大きな成果を挙げることができたように思う。 まず第一の成果は、当該テーマについての基本文献の邦訳を出版することで、我が国における古代世界の呪詛研究のいしずえを築くことができた点である。ゲイジャー著『古代世界の呪詛板と呪縛呪文』(京都大学学術出版会)がそれだ。また、研究のための資料も、これまでは国内にほとんどない状態だったが、今回の補助によって数多く購入することで、今後の研究発展のための基盤がようやく構築された。さらに入手した資料や、その他の経路を通じて手に入れた「呪詛板」についての情報とその文言をデータベース化することで、これまで発見されている、ラテン語で書かれた呪詛板の内容がをすぐに確認できるようになった。 二度にわたる海外実地調査では、日本では把握することのできない、「呪詛板」遺物やその発見地の現況についての知見を得ることができた。今後この問題への視角をさらに先鋭化させながら研究を発展させるうえで、大変有意義であった。
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Research Products
(3 results)