2017 Fiscal Year Research-status Report
12世紀イングランドとノルマンディの貴族間ネットワーク
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15K02961
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
轟木 敦子 (中村敦子) 愛知学院大学, 文学部, 准教授 (00413782)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アングロ・ノルマン / 貴族 / 中世史 / イングランド / ノルマンディ |
Outline of Annual Research Achievements |
本科学研究費助成事業の目的は、研究者の長期的目標である、チェスター伯家をノルマン征服以前から12世紀半ばのレナルフ2世の時代まで含めて全体的に考察することであるが、その構想のなかで、2017年度は昨年度から引き続き、ノルマン征服以前からのノルマンディにおけるゴツ家の活動と、ノルマン征服を経験し、その後同家系の最初のチェスター伯となるヒュー(ユーグ)についての調査・分析を行った。 まず、チェスター伯家について、引き続き資料・研究文献の収集と分析を行った。これには、チェスター伯家に関連する研究のみならず、背景となるノルマン征服前後のノルマンディ地方とイングランドの政治情勢、またウィリアム征服王とその時代をめぐる研究の収集読解も重要である。2017年度は、David BatesによるWilliam the Conquerorそして、Mark HaggerによるNorman Rule in Normandy 911-1144といった、本研究に非常に重要な文献が新たに発行されたため、それら最新の研究動向を研究の土台としてこれまでの研究に盛り込む作業を現在行っている。 2017年度の研究の中心となったのは、上述のようにゴツ家の政治活動と、ユーグの活動の史料収集と分析である。ゴツ家の政治活動に関しては、領地を持つ当該地域近隣の貴族との競合・協力関係が複雑にとりむすばれ、それがノルマンディ公の宮廷においても勢力関係を反映していることが具体的に確認できた。ヒューの活動に関しては、先祖にあたるゴツ家のノルマンディ公の関係と比較し、近隣諸勢力との関係が中央での勢力関係に影響しているなど継続している点が確認できた。しかし、イングランド、そしてウェールズへの進出とその具体的成果をふくめ総合的な活動の評価にはさらなる検討が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由としては、当該研究分野が非常に活性化した状態が続き、重要な研究文献の公刊が相次ぎ、その把握収集に予想以上に時間がかかっていることがあげられる。そのため、11世紀から12世紀にかけての段階までの研究に計画以上に時間を割くこととなった。したがって、12世紀のレナルフ2世の時代がまだ手薄となっているため、やや遅れていると評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
作業が遅れているが、研究計画の全体の方向性について大幅な変更は必要ないと考えている。とくに、研究の活性化は喜ばしいことであるため、今後もできる限り関連する資料や文献の収集は継続しなければならない。それにより、研究対象をより幅広い世界の中でとらえることができると考えている。一方、扱う資料を限定するなど、ある程度の絞り込みが必要となろう。
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Causes of Carryover |
理由としては、まず、在外研究のため渡英する必要がなかったことがあげられる。その一方、オンラインで収集できる資料が考えた以上にあり、現物を入手せずともデータが集められることがわかったため、資料収集の計画を変更した。そして、残念ながら、現在作成中の論文はまだ修正段階であり、2017年度に予定していた英文校閲費をまだ使用していないためである。 未使用分は、2018年度の研究計画に渡欧しての資料収集・調査出張と、英文校閲、そして資料購入を盛り込み、その費用にあてることを予定している。渡欧は、オンラインで入手できない資料の収集、そして、David Bates教授、またElisabeth van Houts教授、Kathleen Keats-Rohan博士との面会が目的である。また、英文校閲費は、英語による研究の公表準備のため、複数回にわたる修正等のやりとりを含めるものとして予定している。また、引き続きCaen大学を拠点とした中世イングランドとノルマンディの共同研究の成果等、研究文献の公刊が進むことが予想され、その費用にあてる。また、Oxford Medieval TextsやAnglo-Saxon Chartersのシリーズなど、関連資料の入手も継続して購入する。
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Remarks |
書評 鶴島博和著『バイユーの綴(つづれ)織(おり)を読む 中世のイングランドと環海峡世界』山川出版社、2015年『西洋史学』第263号 2017年、71-74 頁。
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