2017 Fiscal Year Research-status Report
環大西洋アボリショニズムと「アメリカ体制論」の統合的研究
Project/Area Number |
15K02962
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
肥後本 芳男 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (00247793)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | アボリショニズム / 公共圏 / 環西洋世界 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究プロジェクトでは環大西洋アボリショニズムの拡大が建国間もないアメリカ合衆国の政治文化にいかなる影響を与えたのかを中心に研究を進めてきた。2017年度は、フィラデルフィアの自由黒人コミュニティに焦点をあて、新共和国における人種問題の解決策の一つとしてイギリスの植民運動に触発され1816年に創設されたアメリカ植民協会の活動に自由黒人たちがいかに反応し、当時白人メディアに支配されていた公共的な言論空間の中で自らの立場をどのように表明したのかを具体的な事例を通して論考した。その成果の一部は、共著の一章として刊行された。肥後本芳男、第9章「建国期フィラデルフィアにおける印刷文化、人種、公共空間」、249-277頁、遠藤泰生編『近代アメリカの公共圏と市民―デモクラシーの政治文化史』、東京大学出版会、2017年所収。 また、日本アメリカ史学会第14回年次大会のシンポジウムではアメリカ奴隷制反対協会が独立革命後から19世紀初頭かけて爆発的に増大しつつあった印刷媒体をいかに活用し、政治文化の変容にどのような影響を及ぼしたのかを分析する報告を行った。(肥後本芳男「アンテベラム期の印刷文化とアボリショニズム―郵便妨害から請願書棚上げ論争へ」、日本アメリカ史学会第14回〈通算第42回〉年次大会 於愛知県立大学長久手キャンパス 2017年9月23日) その他関連業績として、北米地域の歴史文化の生成に関する重要な研究書の翻訳を出版するとともに、事典の一項目を担当した。コリン・ウッダード、肥後本芳男、金井光太朗、野口久美子、田宮晴彦訳『11の国のアメリカ史―分断と相克の400年』上下巻、岩波書店、2017年10月。執筆項目「自発的結社」、アメリカ学会編『アメリカ文化事典』、丸善出版、2018年1月。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題について比較的順調に研究は進展しているものの、本務校の授業や委員会任務の負担が大きくなり、研究調査や論文、著作などの執筆にまとまった時間を充てることが年々難しくなってきている。2018年は最終年度にあたるので研究成果を取りまとめるためにできるかぎり研究時間を確保し、当初の研究目的の完遂に努めたい。
|
Strategy for Future Research Activity |
アンテベラム期の英米のアボリショニストの連携と分裂過程についてまだ十分に一次史料にあたり分析できているとは言い難い。このテーマに関する研究を掘り下げるために時間的余裕をみて、英米において補足的な短期のリサーチを行うことも考えている。大西洋世界におけるアボリショニストの連携関係は本研究課題の中核的な議論になるので資料収集と執筆のバランスを取りながら着実に研究を進めるつもりである。
|