2018 Fiscal Year Annual Research Report
The Integrated Study on Transatlantic Abolitionism and "American System"
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15K02962
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
肥後本 芳男 同志社大学, グローバル地域文化学部, 教授 (00247793)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アトランテック史 / アボリショニズム / 奴隷制 / アメリカ体制論 / 請願運動 / シティズンシップ / 1812年戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、米仏の大革命以降大西洋世界においてアボリショニズムが急速に広がるなかで「自由と平等」を掲げて独立を達成した新生アメリカの指導者がいかに奴隷制に向き合い、新共和国のポリティカル・エコノミーのなかに奴隷制をどのように統合しようとしたのかをアトランテック史の視点から再解釈した。具体的には、次の3点に焦点を絞って研究した。1)アボリショニズムとアメリカ植民協会との相克、2)19世紀初頭の「アメリカ体制論」と奴隷労働との関係の検証、3)アボリショニズムが市民秩序の再編過程に及ぼした影響の分析である。 研究成果として、まず著名な黒人船長の活動に着目し、アボリショニズムの台頭と彼の環大西洋貿易圏構想の関係を分析する論考「黒人船長ポール・カフィ―アボリショニズムと環大西洋商業ネットワーク」を刊行した(田中、阿河、金澤編著『海のリテラシー―北大西洋地域の「海民」の世界史』創元社、2016年、所収)。また、建国期の「アメリカ体制」論の主要な論客のひとりであったマシュー・ケアリーの政治経済構想を奴隷制の観点から再検討し、アメリカ植民協会の活動に対して、フィラデルフィアの黒人コミュニティがいかなる反応を示したのかを考察する論文を学術書に寄稿した(遠藤編『近代アメリカの公共圏と市民―デモクラシーの政治文化史』東京大学出版会、2017年、所収)。さらに、議論の射程をジャクソン期まで広げ、広範な請願運動を通して奴隷制廃止運動に重要な役割を果たした女性たちと1830年代の印刷文化の関係を分析する論文「ジャクソン期のアボリショニズムと印刷文化―言論・出版の自由と請願権をめぐって分裂する公共圏』を投稿し、『アメリカ史研究』41号に掲載された。 今後の課題としては、奴隷産品不買運動など民衆の消費活動や結社など「私的領域」におけるアボリショニズムの影響や地域間の受容の差異を追究する必要がある。
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Research Products
(1 results)