2019 Fiscal Year Annual Research Report
financial market and investors in the early modern Europe
Project/Area Number |
15K02964
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
坂本 優一郎 関西学院大学, 文学部, 教授 (40335237)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | 金融市場 / 国債 / 公債請負人 / 18世紀 / 近世 / 福祉国家 / 社会民主主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近世ヨーロッパにおける金融市場と投資家との関係について、短期的アプローチと中長期的アプローチとを組み合わせた分析手法を採用した。令和元年度についても同様に研究を進めた。1)短期的アプローチについては、1757年に発行されたイギリス国債を中心に、証券保有者が市場において誰にどの程度の債券を売却したのか、イングランド銀行所蔵の取引記録のデータ化およびデータの数量的な処理を、過年度から継続してすすめた。その結果、1)18世紀中ごろのロンドンの証券市場の積極的売買参加者は、数十名程度のごく少人数にとどまり、残りは受動的投資者であることが判明した。過年度の研究で判明した、ロンドン市場のキープレイヤー数名については、複数年度でも同様の売買取引に従事していることも判明し、市場参加者の匿名性は相当程度低いこともまた明らかにすることができた。さらに、政府中枢と結びついた「公債請負人」のうち、特定の数名が、こうした少数の積極的市場参加者と密接に結びついている事実も特定できた。近世最末期の金融市場は、こうした少数の公債請負人と、少数の積極的な取引参加者によって、流動性が確保されており、この流動性をもちいて受動的投資家はライフサイクルにおける財産の承継を安全に行いえたといえる。これは、当該金融市場の構造と財産の承継や現金化との有機的な関係を示唆するものである。2)長期的アプローチについては、19世紀の女性投資家と地域的金融市場との関係、および、20世紀の第一次世界大戦期における女性投資家の行動、さらには、20世紀後半期における福祉国家体制と経済のグローバル化との関係を、シティと社会民主主義との関係にそくして、実証的な研究報告を行うことによって、1)で明らかにされた近世的な金融市場と投資家との関係を長期的に評価できたと考える。
|