2018 Fiscal Year Annual Research Report
Boundary fluctuation and trans-boundary movement of children in East and Central Europe in the first half of 20th Century.
Project/Area Number |
15K02969
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
江口 布由子 高知工業高等専門学校, ソーシャルデザイン工学科, 准教授 (20531619)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 戦間期 / 子供史 / 家族史 / 近現代ヨーロッパ史 / 国境 / ナショナリズム / 国籍 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、第一次世界大戦の終結とハプスブルク帝国の解体プロセスとともに国境が大きく変動した東中欧における子供の越境を跡付け、引いては、大戦の終結と帝国の解体を逆照射的に明らかにすることであった。当初、本研究では、この越境として、労働での移動や養子縁組などのさまざまな形態を二次文献や資料をもとに探っていた。そして、2017年度までの研究成果をもとに、最終的に、たとえ物理的な移動が伴っていなくとも、主としたフィールドをオーストリアとし、新しい国境が設定されたことによって境界を越えることになってしまった子供たち、とりわけ婚外子に焦点を絞ることとした。 本研究では、いわゆる血統主義的な国籍規定が優勢であった東中欧において、親と国境を隔てることになった子供の国籍はどのように決められたかを明らかにした。結論から言えば、子供の国籍を規定する最大の要因は父親であった。そして法的にはもっとも父親とのつながりの弱い婚外子こそ、父親との関係が重視されたのである。本研究では、その背景として、混乱する状況のなかで財政難にあえぐ国家や地方の行政体が、親子関係を明確化し親の扶養義務を徹底しようという意図が強く働いていたことを見いだした。こうした知見とともに、揺らぐ国境を人々の生活という場から、「終わらない大戦」と「解体されない帝国」という新たな第一次世界大戦像の一側面を明らかにした。 この成果は、2018年4月に津田塾大学にて開催されたロシア史研究会・東欧史研究会合同シンポジウム「第一次<戦後>を考える」において、「国境の経験―第一次世界大戦直後の東中欧における国籍と親子関係」を発表した。ここでの議論を受け改めて論をまとめたものを、2019年3月刊行された『東欧史研究』(第41号)において、「国境と家族―第一次世界大戦中終結期の東中欧における婚外子の扶養費請求」として発表した。
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Research Products
(2 results)