2015 Fiscal Year Research-status Report
玉類の生産および流通と社会変化の因果関係に関する考古科学的研究
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15K02978
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
大賀 克彦 奈良女子大学, 古代学学術研究センター, 特任講師 (70737527)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 朋美 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 埋蔵文化財センター, 研究員 (10570129)
谷澤 亜里 九州大学, 附属図書館, 助教 (50749471)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 玉類 / 材質 / 流通 / 社会変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
出土玉類の目視による観察とデータ化を行うため、宮城県、京都府北部~鳥取県、福岡県~長崎県、大分県~宮崎県方面にそれぞれ1週間程度の調査を実施した。得られたデータは、各地域において流通している玉類の様相を把握する上で基礎データとなるものである。成果の一部は、東北学院大学アジア流域文化研究所が主催した公開シンポジウム『古代倭国北縁の軋轢と交流』において発表した。 理化学的手法を用いたガラス製品の調査としては、九州歴史資料館所蔵の資料を中心に行った。日本列島ではほとんど確認されていなかった特殊なカリガラスを見出したことや、弥生時代後期の北部九州へ流入するガラス小玉の変遷や地域性を理解する上で重要な知見が得られた。成果の一部は、『古代学』第8号に報告するとともに、日本文化財科学会第32回大会において発表した。 鉛同位体比の分析を行うための鉱石資料を得るため、中国地方および北部九州の鉱山跡をそれぞれ1週間ずつ訪問した。得られた鉱石資料は平成28年度に分析の外注を行う予定である。また、以前に採集していた鉱石資料の中から、古代において開発された可能性があるものを中心として10点(北摂地域3、北播地域3、和歌山1、岡山南部2、福岡1点)の鉛同位体比の分析を外注した。既発表で、原産地不明の原料が使用されている玉類や古代以前に遡る金属製品の鉛同位体比と合致するものではなかったが、福岡県の1点はこれまで山口県長登鉱山産の鉛が使用されていると考えられてきた古代の鉛ガラスや施釉陶器と非常に近似した値を示すことが注目された。引き続きデータを充実させていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
観察的手法による調査は、当初の予定とは対象地域を入れ替えることになったが、3年間の全体計画の中ではほぼ1年間分に相当する量を実施したと考える。東京国立博物館の調査に関しては持ち越してしまった。 理化学的手法によるガラス玉類の材質調査としては、重要資料が多数含まれ、総量も多い九州歴史資料館所蔵資料の調査を終えた。もう1箇所として山口県埋蔵文化財センター所蔵資料を予定していたが、宗像市教育委員会所蔵資料等の調査を行うこととなったことから、次年度に変更した。 鉛同位体比の分析を行うための鉱石資料の採集および分析の外注も予定通り実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の計画に従って実施するが、一部は調査対象や調査地域の入れ替えを行う。 既出資料に対する観察的手法による調査としては、関東、長野県下、山陰西部の資料を優先的に対象としたい。また、繰り越してしまった東京国立博物館所蔵資料の調査も行う予定である。 一方、玉類の変遷と時期区分の関係や、地域ごとの時期区分の広域的な対比の作業も進める。北陸地域および東関東地域に関しては、現在、公表準備中である。 理化学的手法によるガラス玉類の材質調査としては、北方地域の特殊例として北海道奥尻島青苗遺跡出土資料の調査を行うこととなっている。また、植物灰タイプのソーダガラスの生産地を検討するために重層ガラス玉に注目することとし、現在、複数機関と借用の日程調整中である。それらが終わり次第、山口県埋蔵文化財センター所蔵資料の調査に移る予定である。 鉛同位体比の分析としては、山口県周辺などにおいて鉱石資料の採集を行った上で、10点程度の分析を外注する。
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Causes of Carryover |
出土資料の調査における旅費が予定よりも少額で行えたことと、東博調査が繰り越しになったことなどから次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の計画では、具体的な調査候補として挙げていなかった北海道奥尻島の青苗遺跡出土資料について、理化学的手法を用いた分析調査を行う許可が得られた。資料の借用および返却に旅費が必要であり、次年度使用額の大部分はそのために使用する予定である。
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Research Products
(5 results)