2015 Fiscal Year Research-status Report
日本における近世~近代の大型陶器製作技術と系譜に関する考古学的研究
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15K02981
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
田畑 直彦 山口大学, 大学情報機構, 助教 (20284234)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 近世・近代 / 大型陶器 / 堀越焼 / 石見焼 / 薩摩焼 / 唐津焼 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年7月に堀越焼・賀谷窯の測量調査を行った。窯がほぼ完存しており、非破壊で精密なデータを得る必要があることから、(株)とっぺんに依頼してデジタル写真測量を行った。窯内部は撮影困難な場所もあったため、校正作業を経て図化が完了したのは2016年2月末であった。今回測量した過程で、窯が補修を重ねながら使用されていたことを確認でき、関係者・周辺住民の方から、操業時の状況について情報提供を受けることができた。賀谷窯を含めた堀越焼・末田焼の窯は「縦狭間」構造が主体と考えられる。このほか、関係者から協力を得て、賀谷窯の窯道具の調査を行い、操業時及び覆屋残存時の写真ネガのデジタル化を行った。 2015年7月には石見焼大甕の調査を行った。19世紀に出現する石見焼大甕は、形態こそ唐津系甕の影響を受けたとみられるが、内面に指頭圧痕が顕著で内外面に叩きの痕跡はみられない。また、内面の指頭痕は常滑焼・越前焼と近似する。このことから19世紀の石見焼大甕は「人間轆轤」によって成形されたことはほぼ確実である。一部の甕の口縁部上面には合口焼成した痕跡がみられるが、焼成した窯は未発見である。なお、これらの甕はほとんどが他所からの収集品であるため用途は不明である。ルーツを含めた出現過程も不明であり、明治期に出現し、現在まで受け継がれている蹴轆轤による水引き成形へどのように転換したのかも定かではない。これらの解明が今後の課題である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画していた堀越焼・賀谷窯の測量調査と図化を完了でき、関連する調査も順調に実施できた。
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Strategy for Future Research Activity |
関連する窯及び製品の調査を実施する。
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Causes of Carryover |
賀谷窯の測量が予想以上に時間と経費を要したため、予定していた測量調査報告書の刊行を行うことができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には賀谷窯の測量調査報告書を刊行するほか、予定している調査を進めるために使用する。
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