2015 Fiscal Year Research-status Report
小規模島嶼部における先史・原史時代文化適応の考古学的研究
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15K02984
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
新里 貴之 鹿児島大学, 埋蔵文化財調査センター, 助教 (40325759)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | トカラ列島 / 先史時代 / 分布調査 / 九州系土器 / 南島系土器 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は,5月から12月まで台風が発生したため船舶移動がままならず,一定期間を要するトカラ列島の発掘調査は延期を余儀なくされた。そのため,予定を変更し,台風の間隙をぬって各島の分布調査から開始することとした。全部で9つの島の踏査を実施し(諏訪之瀬島・宝島・小宝島・平島・横当島・悪石島・中之島・臥蛇島・口之島),概ね各島で先史時代の土器を確認することができた。特に平島および臥蛇島ではこれまで先史時代遺物の存在が知られておらず,今回の踏査で初めて確認されたこととなる。しかしながら,小宝島と横当島では近世をさかのぼる遺物の確認ができなかったため,先史時代に人間活動がなかったかどうかの確証は得られなかった。 各島で得られた先史時代土器を大きく九州系と南島系に分け,現段階で最新の先史土器編年を用いて並行関係を確定し,各系統の土器がどのようにトカラ列島の島々に分布しているかを確認したところ,縄文時代中期頃から南島系土器が主体となって確認され始め,縄文時代後期にはほぼ全域に南島系土器が分布し,ときにトカラ列島中央部あたりで九州系と拮抗することがあることも分かった。しかしながら,古墳時代頃から九州系の須恵器,古代では須恵器・土師器が各島で確認されるようになることから,北からの物流が強くなっていく傾向にあることが確認された。これを平成28年2月22日,鹿児島大学国際島嶼教育研究センター総合学術報告会で「トカラ列島の先史文化はどこまで遡り得るか」と題して公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は,5月から12月まで台風が発生し,移動手段が船舶しかない関係上,一定期間を要するトカラ列島の発掘調査は延期を余儀なくされた。そのため,年度内予定を変更し,台風の間隙をぬって各島の分布調査から開始することとした。その結果,これまでに未確認であった島々(臥蛇島・平島)においても先史時代遺物を確認することができ,また,他島でもこれまでに確認されていなかった時期の遺物を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2年間実施予定であった分布調査を平成27年度にほぼ終えることができたため,平成28年度は1年間に2回の発掘調査を実施することで,研究の目的を果たしたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた原因は,5月~12月まで断続的に来襲した台風の影響による。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は,トカラ列島内の中之島宮水流遺跡の発掘調査と宝島大池遺跡の発掘調査を実施する経費として,その大半を使用する。
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Research Products
(9 results)