2016 Fiscal Year Research-status Report
東南アジアにおける黒褐釉陶器の成立と展開に関する考古学研究
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15K02991
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
田畑 幸嗣 早稲田大学, 文学学術院, 准教授 (60513546)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | クメール陶器 / 横焔式地上窯 / 東南アジア窯業史 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度の予想以上の調査進捗状況をうけ、さらなる窯跡発掘調査を行った。ヴィール・スヴァイ1号窯を完掘したため、これと比較するために近隣で発見されたヴィール・コック・トレ窯の調査に着手した。窯体マウンドの測量調査を行った後、トレンチ発掘を試みたところ、残存状態の良い窯壁を検出することがでた。また、窯周辺では物原が確認され、豊富な遺物(コンテナ約5箱)が出土した。 確認された窯壁をもとに、窯体プラン全形の把握と、床面確認の調査を行った。調査の結果、細長い単室の横焔式窯であることが判明した。焼成室の床面はほぼ検出できた。また、燃焼室については、側壁の立ち上がりでプランはある程度判明しているものの、燃焼室と焼成室の間にあると考えられる障壁や焚口などについては実検出であり、次年度以降の課題となった。 また、2×2mの小規模なトレンチを物原とおぼしき場所に設定したが、ここからは非常に多量の遺物が出土し、なかにはこれまでアンコール後期の寺院群でのみ確認されていた黒褐釉瓦も含まれていたことから、今後は、こうした瓦類の生産地同定が可能になろう。 調査の結果、同窯はヴィール・スヴァイ窯と同様に粘土を主材料とし、基本構造を共有する横焔式地上窯であることが確認された。燃焼室の調査にまではいたらなかたったが、焼成室の調査から、やはり、これまでシンガポール大と現地研究者の混成チームが主張してきたような「サイド・ストーキング・ポート」と呼ばれる付帯施設を持たないことは確実になり、混成チームの誤認が疑われる状況になってきた。したがって、アンコール地域におけるクメール黒褐釉陶器窯は、これまでに調査された灰釉陶器窯の構造を基本的に踏襲している可能性が非常に高くなってきた。 遺物基礎整理は昨年度から引き続き継続中であり、次年度に図化・データベース化が完了する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度の当初の計画であった、発掘の継続については、さらに1基の窯を調査することができたため、予想以上の進展となっている。また、自然科学分析についても、燃料材の同定などの進捗がみられた。発表については、予定を前倒しし、概要報告を29年度初頭には刊行できる見込みである。また、29年度に予定していた、東北タイとの比較についても、予備的な検討を28年度中に開始することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
カンボジアにおける窯跡の補足調査はあくまでも補足にとどめ、最終年度として出土資料のとりまとめと分析に傾注する。カンボジア調査後に、予定通りタイでの比較調査をおこない、年度後半は分析結果の統合と報告書の執筆、Web上での成果英文公開を行う。 また、29年度7月にポーランドで開催されるヨーロッパ東南ジア考古学者会議では、陶磁器のセッションを立ち上げているが、そこでも本研究の成果を一部発表する予定である。
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Causes of Carryover |
事務用品の金額改定により、当初の見積もりよりもわずかに安価であったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の消耗品費として費消予定
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