2016 Fiscal Year Research-status Report
中国初期王朝時代の政治的空間構成の考古学研究-GISを応用した地域システムの分析
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15K02993
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
西江 清高 南山大学, 人文学部, 教授 (10319288)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡部 展也 中部大学, 人文学部, 准教授 (10365497)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 考古学 / GIS / 黄河流域 / 初期国家 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
中国初期王朝時代の政治的空間の構成について、平成28年度は主に次の3点に集中して研究を進めた。 ①黄河下流域(山東省)に関する遺跡データベース(GIS基盤)の作成:中国から出版されている『中国文物地図集』のデータに基づき、遺跡の位置情報を中心に4000箇所余りを入力し、デジタル地図内に格納した。また、半年間南山大学に滞在した山東大学の専門家との学術交流を毎週定期的におこない、意見交換して、当該データベースに反映させた。山東省に関する遺跡データベースの完成は平成29年度になる予定である。②黄河中流域(河南省、陝西省)の現地調査と学術交流:10月末から10日間余り、河南省、陝西省の初期王朝時代遺跡とその政治空間に関わる周辺地域の地理環境を調査した。二里頭遺跡(「夏」王朝の王都)では立地する盆地空間の周辺地理環境、陝西省では豊鎬遺跡・周原遺跡(西周王朝の王都)において、同様の周辺地理環境を調査した。地理環境調査の眼目は「可耕地」の広がりを確認することで、今回幾つかの具体的な新認識を得ることができた。③中国初期王朝の「遠隔地」としての「外域」に関する研究:研究代表者の提起する初期王朝政治圏の「外域」という概念がある。これに関連して「牙璋」という初期王朝時代の政治性を帯びた特異な儀礼用玉器に注目し、その分布と拡散の経緯を初期王朝政治圏の形成と関係させて検討した。その成果は中国で開催された国際会議(東亜牙璋学術研討会議)において発表した。 今後の研究の方向として、上記①のデータベースの完成とそれにもとづく黄河下流域の分析を進め、②の黄河中流域の研究をさらに深化させる一方で、③の「外域」に対する内容にも重点を置いて研究を進める必要を考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた黄河流域遺跡データベースの作成は、概ね順調に進められている。「研究実績の概要」にも触れた黄河下流域山東省の研究者の参与を得て、データベース自体の内容を深めるとともに、諸作業がスムーズに進行できた点も指摘しておきたい。 ただ、政治的空間の分析過程においては、現地調査で得られる地理的情報が予想以上に豊富で、それを分析結果に反映するためには予定以上の時間を要することとなっている。 一方、「研究実績の概要」にも触れた初期王朝政治圏の遠隔地である広大な「外域」については、本研究の進展とともにその研究対象としての重要性が増しており、当初の計画が黄河流域を中心にしたものであったが、それよりはるかに広大な地域に対する検討も必要となってきた。こちらへの対応にも予定を若干超えた時間を要する状況となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
研究対象地域の中心となる黄河流域に関しては、継続してGIS基盤の遺跡データベースを作成し、同時に現地における考古地理学的な調査を継続して、その結果と照らして分析を進める。これに関してはほぼ予定通りである。 一方、これまで黄河中流域(陝西省、河南省)中心だった分析を、黄河下流域にももう一つの重点を置く研究上の戦略的展開を考えており、黄河下流域山東省の研究者の協力を得て、その方向でも推進する予定である。 さらに、「現在までの進捗状況」で触れたように中国初期王朝の「外域」、とくに中国大陸南方の諸地域について、本研究の進展とともに当初の予定を超えてその重要性が高まりつつある。これについては、いずれ本研究とは別の研究助成を申請するなどして、本研究と並行して進めるべき研究課題となる可能性が高い。ただし、本研究の中でもかならず一定程度の予察を進展させる必要があり、その方向で研究を展開させていきたい。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通りに使用したが、一部物品の価格などに予定との差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画の枠内で、旅費、人件費、謝金等を翌年度分と合算して、無理なく適切に使用する。
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Remarks |
参加した国際学会の紹介
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