2016 Fiscal Year Research-status Report
先住民族の環境紛争解決のためのインフィニティ型ディプロマシー理論の実証
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15K03003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松井 健一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50505443)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 環境紛争 / 先住民族 / 水倫理 / 鉱山開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度においては、主に(1)フィールドワーク等、(2)共同セミナー、(3)論文掲載、(4)国際的な学際研究グループの立ち上げ、(5)ウェブサイト等の更新を行った。 1. フィールドワークは、8月に豪州メルボルンとギップスランドで、アボリジニと鉱山開発問題について情報を収集した。9月には、蘭デルフトで水管理・災害管理に関する政策事例について情報収集した。1月~2月は、モンゴル、キルギスタン、ガーナを訪れ、環境紛争に関する情報を入手、政府関係者と面談・意見交換を行った。3月には、カナダ、バンクーバーで環境紛争について事例の情報を収集した。 2. 6月に米ネヴァダ大学からKate Berry教授を本学に招聘し、水ガバナンスと先住民族の権利問題について、7月に、カナダ、ウォタールー大学のSusan Roy助教に先住民族との共同研究について発表してもらった。松井は、6月にJETROアジア経済研究所で、10月に、中国同済大学の国連環境計画傘下のプログラムで、環境紛争について招聘講演をした。12月には、デルフト工科大学のMaurits Ertsen准教授と国連大学のMario Tabucanon教授を講師として招き、水開発問題とリーダーシップについて講演・意見交換をした。1月には、デルフト工科大学のEdo Abraham助教と同大学Hubert Savenije教授、中国同済大学のGuo Ru准教授に招聘講演をお願いした。 3. 論文掲載は、Water Historyという学術雑誌に、米・豪の研究者と先住民族に関わる水問題に関して特集を12月と1月に2号分掲載し、編集・出版を行った。 4. 研究グループは、米・豪・独・蘭・中などの総計20名で国際研究団体であるSustainable Water Future ProgrammeにWater Ethics Working Groupを立ち上げた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該研究に関連するネットワークが、北米、豪州、欧州、中央アジア、東アジア、西アフリカ、東アフリカへと広がり、当初の想定以上に国際的に広がりを持ってきた。先方からアプローチしてくケースも少なくなく、共同研究の依頼も増えた。また、ウェブサイトで研究を可視化することで、松井の研究協力者となる学生がケニア、ガーナ、モンゴル、キルギスタン、中国から非常に増え、正規大学院生だけで30名に達した。そのほぼ半数が、それぞれの国における環境紛争について研究しており、近い将来その研究成果をウェブサイトや論文で可視化できるだろう。 米・豪・欧州における研究者との共同研究活動も多様化した。1つは、共同で学術誌の特集をエディターとして2号分行った。これは、4月後半からSkypeなどで定期的に会議を開き、情報をウェブサイト上でアップデートしながら時間をかけて行ってきた。発行してまだ数ヶ月だが、良い評価を数名からもらっている。2つ目は、国際研究団体であるSustainable Water Future Programmeに、Water Ethics Working Groupを20名の研究者やNGO関係者と立ち上げることができ、国際的な機関から共同研究を展開する場が増えたことである。3つ目は、国連環境計画のプログラムであるアジア・太平洋の持続可能な開発のためのリーダー育成プログラムに招聘講演の依頼を受け、国連大学をはじめとした国連関係の研究者との共同活動が始動した。 国内では、アジア経済研究所とのコラボも始まった。沖縄における辺野古周辺の環境紛争についても、研究協力者の学生とフィールドワークを行い、沖縄の先住民族の団体である琉球弧の会の代表である当間氏や反対運動の代表からも4回目の聞き取りをするなど、順調な資料収集活動が可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度に関しては、紛争解決に関する論文数を増やすことが最優先課題である。それに付随して、国際研究団体との共同研究から、翌年度以降にもつながる論文への布石を打っておくことも重要である。さらに、研究者ネットワークを広め、本科研研究の国際的知名度を上げることを目標に掲げたい。 また、大学院生との共同研究活動から、研究対象エリアの拡大と、モデルの国際的な汎用性を実証していく機会としたい。
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