2017 Fiscal Year Research-status Report
先住民族の環境紛争解決のためのインフィニティ型ディプロマシー理論の実証
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15K03003
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松井 健一 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (50505443)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 先住民族 / 環境紛争解決 / 権利 |
Outline of Annual Research Achievements |
先住民族の権利に関わる紛争解決は、平成29年度から日本でも特に大きな政治的な動きが出ており、松井は、これまでの研究を生かし、政府に対して北米やオーストラリア、ニュージーランドの事例を交えた意見書を提出した。こうした実績に加えて、発展途上国における環境紛争解決にも学会発表や学術雑誌掲載などを通して、アフリカのガーナ(土地紛争)を始め、キルギスタン(鉱業開発)などの研究成果を出すことができた。 今回の研究では、海外の事例をもとに日本の先住民族の権利に関わる問題にフィードバックすることが1つの目的である。特に、アイヌ民族については、日本政府が先住民族と認識するようになり約10年が経つ。平成29年度は、内閣府とアイヌ民族の代表の間で折衝が行われ、先住民族としての権利の輪郭を探り、新法制定への動きが出ている。研究者として、松井は先住民族の権利に関する知識をこれまでの研究から蓄積しており、今回は特に狩猟・漁労・採集の権利に特化して意見書を作成した。特に、アメリカやカナダの先住民族の先例の解釈と紛争解決の過去の事例から、日本における先住民族の権利と紛争解決のための可能なシナリオを提示した。 発展途上国のケースについては、伝統的な土地所有と現代法による土地所有が重複し紛争が起きているガーナに視点をおき、この地域出身の博士課程の学生と共同で聞き取りなどを行い、これまで明らかになってこなかった、土地権問題の解明を行った。特に、土地紛争が起きた場合、どのような機関がどのような役割を果たしいるのか、紛争の原因はどこにあるのか明らかにすることができた。キルギスについては、金の採掘に関わる問題が起きている。また、鉱山開発が終わった後の土地の修復問題も山積している。これについて、政策的なアプローチから、紛争解決について提言をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまで蓄積してきた研究成果が、政府への意見書としてまとめる依頼を受け、計画以上に進展することができた。受け取ったアイヌ民族からも非常に良い反応をいただいた。 また、29年度は、想定以上に学会での発表や共同論文掲載が増えた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、さらにアイヌ民族の紛争に関して、文化遺産・自然遺産への権利紛争について意見を述べることになっている。これについて、特にアメリカやカナダ、ニュージーランドでの事例を明らかにしていく。これに関して神戸大学の分科会と共同することになる。これも新たな動きである。 また、気候変動に関する案件にも手がけ始めており、これをさらに深化させたい。30年度4月には、カルフォルニア大学バークレー校で2つの事例について発表することになっている。先住民族は、今後さらに気候変動による影響を受けることがIPCCの報告やUNFCCCなどで言われており、事例研究を今後さらに提供できるよう、研究を進めていく。
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Research Products
(13 results)