2016 Fiscal Year Research-status Report
観光地をめぐるメディアと場所イメージに関する歴史地理学研究
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15K03004
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
関戸 明子 群馬大学, 教育学部, 教授 (50206629)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ツーリズム / メディア / 紀行文 / 観光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,観光地に関するガイドブック・鳥瞰図・絵はがき・新聞記事・広告・リーフレットなどの多様なメディアを通して,観光地がどのように表象されたのか,それぞれの主体がどのような実践を行ったのかを分析し,観光地の場所イメージがどのように生成されてきたのかを解明することを課題としている。 平成28年度は,A.理論的なアプローチを深めるため,メディア研究・ツーリズム研究に関する文献を収集して整理を進めること,B.研究課題にかかわる一次資料の収集を行うこと,の2点に取り組んだ。Aについては,順調に進めることができた。Bについては,群馬県の他,兵庫県,宮城県,奈良県の図書館・文書館等において資料調査(書誌事項の記録,撮影・コピーによるデータ収集)を行った。前年度収集した資料とあわせて,分析を進めていく。 また,平成28年度のおもな課題として「明治期における変容」について検討した。これについては,草津温泉を事例に,明治期における紀行文や案内書を数多く収集して,そのテクストを分析し,場所に関する叙述内容の変遷を跡づけた。そこから,どのような場所イメージが形成されたのかを考察した。この成果は,平成29年6月に開催される歴史地理学会大会にて研究発表を行う。また,近世から昭和初期までを対象に,草津温泉をめぐる歴史叙述の特色を考察した「草津温泉の開湯伝説と歴史意識の形成」を公刊した。草津では,温泉地ゆえ傷病者の療養に適していることを対外的に広告するため,多くの武将の入湯があったことを強調しており,それが場所イメージと結びついていることが示唆された。 このほか,『日本生活史辞典』の執筆にかかわり,「観光」「旅」「旅行」「旅行案内」など,本研究課題にかかわる項目を担当した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は4年計画の第2年目であるが,資料の収集とその整理・分析については,ほぼ予定通り進展している。研究成果については,群馬大学教育学部紀要(人文・社会科編)において公刊したほか,平成29年6月に学会発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
理論的なアプローチを深めるため,引き続き関連する文献を収集し整理を進める。資料調査も同様である。また平成28年度の課題とした「明治期における変容」については,補充調査と考察を続けていく。さらに平成29年度は「大正期における大衆化の進展」を主たる課題とする。この時期は,鉄道の旅客輸送量が急増し,印刷技術の進歩でメディアの出版が大きく成長した。一方で,戦争に備えて,体力の増強と精神の発揚が求められ,それを養うことのできる旅行が注目された。盛んに出版されたガイドブックを手がかりに,作成主体の違いによる場所イメージの諸相を分析し,場所に付与された個性を析出する。
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Causes of Carryover |
年度末に行った出張旅費の支出額の確定が遅れたため,残額が把握できず,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初予定していた資料の購入を計画している。
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