2016 Fiscal Year Research-status Report
旧利根川中・下流域における国郡境界の変更とその背景に関する研究
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15K03005
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
門井 直哉 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(教員養成), 教授 (20324139)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 国郡 / 境界 / 利根川 / 武蔵 / 下総 / 葛飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は前年度の成果を踏まえ、現地での資料収集を進めながら、下総・武蔵国境の変遷についてさらに詳細な検討を加えた。具体的には、寛永日本図等に描かれた総武国境の位置の調査と、幕府から武家・寺社に授与された朱印状にみえる葛飾郡や近隣の郡の村々の分布状況について調査を行った。その結果、①埼玉県幸手市周辺の総武国境の位置については寛永日本図とされる数種の絵図の間でも相違がみられること、②庄内古川の右岸地域が武蔵国に編入された時期については、国絵図や日本図から推定される年代と検地帳の村名表記から推定される年代との間に齟齬があること、③朱印状の村名表記には寛文年間においてもなお古利根川右岸地域に下総国葛飾郡と記載される例があること、④朱印状の表記で下総国葛飾郡の所属とされる村は旧利根川下流域に限らず広範囲に分布し、隣郡の村ともしばしば交錯状態にあること、等の事実を確認した。このような国郡境界の揺れや表記の混乱は、江戸前期においても依然として当該地域の国郡境界に対する認識は一様でなかったことを示すものであり、総武国境の移動時期に関して諸説を生じさせる一因になったと推測している。 また上記の研究の他に本年度は、船橋市西図書館が所蔵する「下総之国図」の原寸複製図の閲覧・撮影と同図に関する先行研究の収集も行った。同図にみえる総武国境のあり方は寛永日本図以降のそれとは異なり、旧利根川河口部では隅田川を総武国境として描く点に特徴がある。ただし同図については近世初期の下総国の様子を描いたものとする説がある一方で、元禄~享保年間以降に作成された歴史地図とする説もあり、その評価は必ずしも定まっていない。そこで本年度は史料批判を試みるべく、同図の記載内容についての判読と同図にみえる村落の現地比定作業を進めた。この作業は次年度も継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
必要な資料を概ね収集することができて、それらの分析・検討作業も捗ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる平成29年度は次の研究を行う予定である。(1)「下総之国図」についての史料批判。(2)江戸前期において総武国境の認識に齟齬が生じた理由の考察。(3)移動時期について諸説が生ずるに至った社会的背景の考察。(4)江戸中期以降、総武国境についての認識が収束していくプロセスの考察。とくに(2)~(4)については文献調査を中心に研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
必要な資料の収集が順調に進み、当初予定していた現地調査の回数を減らすことができたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度の研究内容に関わる調査旅費に充当するほか、図書・資料の購入費に充てる予定である。
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