2017 Fiscal Year Annual Research Report
A historical geography of modern Japanese' colonial tourism and experiences
Project/Area Number |
15K03007
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
米家 泰作 京都大学, 文学研究科, 准教授 (10315864)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 哈爾浜 / 満洲 / インペリアル・ツーリズム / 植民地観光 / ロシア / 南満洲鉄道 / 旅行記 / オクシデンタリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度にあたる平成29年度は、昨平成28年度に実施した哈爾浜(ハルピン)の現地調査を踏まえて、近代日本からの中国東北地方(満洲)北部への旅行記の分析を進めた。その結果、従来想定されていたよりも早く、ロシア革命(1917年)後からかなりの日本人旅行者があったこと、またロシア帝国の終焉を迎え、旅行者がロシアへの対峙を強く意識して哈爾浜を体験したこと、そして蔑視と憧憬がないまぜになったオクシデンタリズムがロシア文化に投影され、次第にコロニアルツーリズムの消費対象となったことが見いだされた。その成果は、本年度3月の日本地理学会で報告済みであり、さらに本年7月にポーランドで開催される国際歴史地理学会でも報告予定としている。また、その報告準備と並行して、論文とりまとめる作業を進めている。 また、昨平成28年度に進めていた、明治・大正期の朝鮮地誌を俯瞰して、地理的知とコロニアリズムの関わりを探る作業については、『明治・大正期の科学思想史』に収録され、公表された。 ほかに、一昨年の平成27年度に進めていた1935年の「朝鮮八景」選定に関する研究成果に関しては、すでに成稿していたものの、当初の出版社の事情により刊行が遅延していた。本年度、出版社を変更して刊行された『景観史と歴史地理学』に収録され、公表に至ったことを申し添えておく。 本年度をもって当研究は予定通り終了したが、朝鮮半島から中国東北地方にかけて、近代日本が展開したコロニアルツーリズムの諸相を把握することができ、その地域差(特に朝鮮半島と中国東北地方の違い、また中国東北地方のなかでの南北の違い)についても、興味深い構造が見いだされた。それは、日本との「自己化」を迫るベクトルと、ヨーロッパの帝国主義との対峙というベクトルの、せめぎ合いとして理解できる。この点については、引き続き、次の研究計画のなかで追求する予定である。
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