2016 Fiscal Year Research-status Report
オーストリアにおける地域計画と中小都市の存立構造に関する地理学的研究
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15K03009
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
川田 力 岡山大学, 教育学研究科, 教授 (30263643)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オーストリア / 都市 / 地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、近年のグローバルな都市間競争を念頭にしたオーストリアの地域計画において、広域連携に基づく地域再編プログラムが実施される中で、中小都市がいかに持続的に発展しているのかを各都市の都市マネジメント戦略と関係づけて検討することにある。 本年度は、オーストリアを訪問し、昨年度実施した情報収集結果に基づき構築した現地調査実施プログラムにもとづき、グラーツ市において、グラーツ市の社会経済状況、都市計画、国際的都市間競争・持続的な発展への対応、都市計画と都市経営に関する地方行政組織の構造と実態および、開発計画地区内の住民意識についての現地調査を実施した。 その結果、①グラーツ市では、1995年のオーストリアのEU加盟直後の1996年からEUの地域政策の中心的理念である持続可能な開発、すなわち、環境、経済、社会の持続可能性を十分に配慮した計画の策定とその実施を明確に打ち出し、EU基金に基づく統合的都市開発プロジェクトを積極的に獲得していること、②2003年の欧州文化首都プロジェクトの対象都市に選定されたことを契機に建設された現代美術館およびムーア川の人工島を象徴的に利用するなどして文化都市イメージの定着を図っていること、③グラーツ市では、今後も人口増加と経済成長が継続すると予測しており、遊休地の開発および土地利用の高度化により、産業系および住居系の土地利用需要に対応することを計画しているが、持続可能な開発と文化都市イメージから構成される生活の質をより高める都市を計画目標に掲げることで、住民や多くのステークホルダーの合意を形成し、都市間競争に臨んでいること、を明らかにし学会で発表したことが今年度の顕著な成果といえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度には、オーストリアを訪問し、昨年度実施した情報収集結果に基づき構築した現地調査実施プログラムにもとづき、グラーツ市において、グラーツ市の社会経済状況、都市計画、国際的都市間競争・持続的な発展への対応、都市計画と都市経営に関する地方行政組織の構造と実態および、開発計画地区内の住民意識についての現地調査を実施した。また、以上の結果を取りまとめ、必要な情報を地図化処理して分析した結果を、2017年度日本地理学会春季学術大会で発表した。以上のことが研究目的達成のための今年度の研究計画であったため、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の計画で研究を進める。(1)事例調査の実施準備:情報収集の進んでいる事例調査候補都市のクラーゲンフルト市について検討を進めている現地調査プログラムを参考にしつつ、現地調査実施プログラムを構築する(2)事例調査の実施:現地調査実施プログラムにもとづき、事例調査都市における社会経済的状況、都市計画、国際的な都市間の競争・持続的な発展への対応、都市計画や都市経営に関する地方行政組織の構造と実態、都市の政治・経済的状況などについての詳細な現地調査を実施する。(3)調査結果の分析と補足調査の実施:以上の結果をとりまとめるとともに、都市特性に関する統計データを入手し必要な情報の地図化処理を加え、中小都市の存立構造の地域的差異およびその要因と他地域への波及効果について分析する。その際、必要に応じて事例調査都市において補足調査を実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は以下の3点である。(1)現地調査として、ウィーン市、グラーツ市、クラーゲンフルト市ほかを予定していたが、クラーゲンフルト市では行政担当者との日程調整がつかず、現地調査を断念し日程を短縮したこと。(2)オーストリアの地域計画関係図書の購入を予定し図書の選定を実施していたが、調査の進展により、さらなる精査が必要となったため購入を延期したこと。(3)都市特性に関する統計データの購入を予定していたが、統計データへの定期アクセス権の購入というシステムであることが判明したため、調査を取りまとめる年次での購入がふさわしいと判断し購入を延期したこと。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究経費の主な使用計画は以下のとおりである。(1)クラーゲンフルト市での現地調査を実施するとともに、ウィーン市およびグラーツ市で追加調査を実施する。(2)オーストリアの地域計画関係図書を精査し、必要な図書を購入する。(3)オーストリアの都市特性を分析するため、都市特性に関する統計データへの定期アクセス権を購入する。
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