2015 Fiscal Year Research-status Report
未利用の地理資料を用いたエチオピア南部の森林・サバンナ動態の検証
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15K03013
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
佐藤 廉也 大阪大学, 文学研究科, 教授 (20293938)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 人文地理学 / 土地利用 / 土地被覆 / サバンナ化 / エチオピア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、アメリカ議会図書館および国立公文書館に所蔵される未利用の旧版地形図および空中写真を用いて、大規模な森林減少・サバンナ化が指摘されてきたエチオピア南部における1940年代から現在までの土地被覆・土地利用変化を復原し、具体的な検証が乏しいまま環境劣化が強調されてきたアフリカの環境問題に地理学・環境史の分野からの貢献をしようとするものである。本研究では、上記の地理資料を用いて土地被覆・土地利用変化をGISで定量的に分析するとともに、エチオピア南部の広域の現地調査と文献調査をあわせておこなうことによって、民族集団の生業動態・文化規範や国家政策との関連で変化のメカニズムを説明することを目的としている。 今年度は、ワシントンDCのアメリカ議会図書館に所蔵されたエチオピア地図のうち、南西部ガンベラ州の地形図のスキャニングとGIS分析の準備作業である位置座標の付与をおこなった。同時に、アメリカ公文書館所蔵の1940年代のエチオピア南部空中写真を目視判読し、植生・土地利用動態分析のための着眼ポイントを検討した。そして、ガンベラ州において(1)1940年代の空中写真から森林域を抽出する(2)1980年代測量の地形図から森林域を抽出、そして(3)2時期の森林面積を抽出し、森林の増減を定量的に明らかにすること、という手順で基本的な土地被覆変化を把握することとし、作業に着手した。さらに次年度以降は、(4)同地域における集落の位置と範囲を同様に2時期について抽出し、(5)集落動態をパターンの変化として分析するという目標を設定した。これは、同地域において社会主義政権による村落化が1980年代前半期にすすみ、多数の少数民族が移住・集住化を強いられた事実にもとづき、それらの政策の環境への影響を評価するための作業である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、当初予定した現地調査を実施しなかったが、既存の資料の整理・分析を通しておおむね設定していた目標を達成することができた。今年度の進捗と成果については人文地理学会例会でも発表することができた。また、次年度の目標も明確化することができ、今後も順調に研究をすすめる見通しを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、「研究実績の概要」で述べた手順によって研究を進める。本研究の大きな柱として、「エチオピア南部における森林・サバンナの増減」「エチオピア集住化政策における森林・サバンナ増減への影響」を明らかにするという目標がある。前者は地形図・写真の分析をすすめることによって、後者はそれに加えて現地における聞き取りをすることによって成すことができる。したがって、次年度は国内で作業をすすめるとともに、エチオピアの調査を優先的に実施する。
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Causes of Carryover |
27年度は予定していた海外調査を延期したために当初の予定よりも支出額は少なくなった。これは、エチオピアにおける政治情勢を勘案したことが理由の一つにある。しかし既に入手した資料の分析を当初の予定を上まわるペースで実施できたため、進捗に問題はないと考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度は27年度に調査を延期した分の海外調査(エチオピアとアメリカ合衆国)を予定している。また、対象地域の衛星データ購入の必要もあらたに生じたため、これらの支出を中心に研究を実施する予定である。
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