2015 Fiscal Year Research-status Report
中国沿海部における国内移住の新たな動向と地域振興政策への評価
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15K03014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 康久 九州大学, 比較社会文化研究科(研究院), 准教授 (10362302)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 就職活動の情報化 / 生活コスト / 性差 / 外国語人材 / 所得格差 / 雇用機会 / キャリアアップ / 移動への制約 |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度は、既に前年から、調査をはじめていた中国山東省済南市の大卒者の就職移動に関する調査結果を論文としてまとめたほか、韓国語を話せる朝鮮族人材が多い吉林省延吉市への韓国の情報サービス産業の進出状況やそこでの朝鮮族人材の就業状況についての調査を行い、その結果を雑誌論文に投稿した。その内容は日本都市地理学会編『都市地理学』に掲載予定である。延辺においては、情報サービス産業の進出が停滞しており、韓国語人材の他地域への流出がみられている可能性がある点が明らかになった。 加えて、浙江省杭州市におけるホワイトカラー職の居住地・就業地選択を性差に着目しながら検討し、その内容を国際学会などで発表し、査読付き学術雑誌に投稿中である。杭州市への他地域からの移動はある程度みられるものの、住宅費などの生活コストの高さから、結婚適齢期になると離職して出身地に戻る男性が多い点が明らかになった。 また、27年8月には、華南地域(広東省・香港)において、中国人大卒ホワイトカラーの都市間移動と就業継続意志についての調査を行い、国内学会等で報告した。華南地域で就業している他地域出身者の場合は、賃金水準よりは、キャリアアップを図れる職種に就業できる可能性がある点を評価し、同地域で就業を継続する人が多い点が指摘できる。逆に言えば、就職時点での生活コストの差を考慮した実質的な賃金水準では、出身地で働く場合と比べて、それほど大きな差がないことも分かった。 全体的にみると、国内縁辺地域である延吉市での調査結果を除くと、省外等の出身地から遠く離れた地域で継続的に就業を続けることができる人は、それほど多くはない傾向がみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一部の調査計画を前倒しで行ったこともあり、現時点で、本研究課題に関わる査読付き学術論文を3編執筆し、加えて、投稿中の論文も一本ある。学会での口頭発表も国際学会での報告を含めて4回行うことができ、研究計画は概ね順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も、本年と同様なペースでの研究の進捗を目指したい。課題としては、研究協力者になってもらっている指導学生の多くが、博士課程に進学する予定であるため、自身の研究が忙しく、 本科研費の調査に参加できなくなる可能性がある。 より多くの大学院生を大学院に入れて、研究に協力してもらえるようにすると同時に、研究代表者も、本研究課題に対して、より多くの時間を割く必要があると考えている。
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Causes of Carryover |
状況の変化に対応して、応募時の計画書に示していた5つの現地調査の計画のうち、一部を次年度に先送りにし、他の2つの調査に集中することにしたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度、先送りにした現地調査は次年度実施する計画である。
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Research Products
(9 results)