2016 Fiscal Year Research-status Report
中国沿海部における国内移住の新たな動向と地域振興政策への評価
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15K03014
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
阿部 康久 九州大学, 比較社会文化研究院, 准教授 (10362302)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ホワイトカラー / 性差 / 出身地 / 情報サービス産業 / 住宅費 / 杭州市 / 延吉市 / 珠江デルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本科研費の研究テーマと関連する3編の論文を査読付き学術雑誌に掲載させることができた。沿海部都市の中で、国内移住者の送り出し地域である吉林省延吉市と受け入れ地域である珠江デルタ地域(深セン市、広州市)と長江デルタの杭州市における調査結果を公表(1編は現時点では未掲載だが掲載が決定済み)することができた。 延吉市での調査では、同市への情報サービス産業の進出と停滞について従業員の雇用条件等に注目して検討した。同市への企業進出は2006年頃から顕著になり始めたが、2008年以降は一部の進出企業では経営状況が悪化するものや撤退するものもみられた。一方、賃金水準は以前に比べると上昇しているものの、国内の他地域や海外を勤務地とする求人に比べると依然として低い水準にあり、同市から国内外の先進地域への若年ホワイトカラー層の流出が推測される。 珠江デルタ地域での調査では、内陸部等からの大卒ホワイトカラーの流入がみられ、その移住の背景として収入レベルよりも、自身が大学で学んだ専門分野等を活かせる雇用機会がある点を重視する人が多いことが分かった。その一方で、珠江デルタ地域の住宅費などの物価水準を考慮すれば、収入レベルは必ずしも高いとは言えず、将来、移住してきた他地域出身者が出身地に戻って転職する要因になる可能性もあることが分かった。杭州市での調査では、特に同市の民営企業で働く男性の他地域出身ホワイトカラーでは、結婚に際して、住宅を購入することができない等の理由から、同市の企業を退職して出身地に戻る傾向がみられた。 以上の3つの研究から、若年ホワイトカラー層の大都市への人口移動がみられるものの、住宅費等の物価の高さから、出身地に戻る人も多くみられることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
助成期間の2年目に当たる昨年度は、本研究課題に関連して査読付き雑誌論文3編を執筆したほか、国際学会での英語での発表3件(うち1件はプロシーディングも執筆、1件はポスター発表)、国内学会での口頭発表4件を実施することができた。 また、昨年度実施した調査結果も、最終年度である今年度に向け、随時、査読付き雑誌論文に投稿していくことが可能であると考えている。 本助成金申請時に想定していた成果を挙げることができたため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度実施した、遼寧省撫順市における失業者の再就職状況と再就職移動の有無についての調査や、遼寧省朝陽市における住民の住宅購入動機と定住の可能性についての研究等、いくつかの調査結果を、最終年度である今年度に向け、国際学会等で口頭発表するとともに、随時、査読付き雑誌論文に投稿していきたいと考えている。 本年度は、他の研究論文の執筆予定等もあり、本科研費の研究に多くの時間を割けない可能性もあるものの、しっかりとスケジュールを管理しながら、研究を進めていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
比較的経費がかからない論文やその他の原稿の執筆に研究時間の多くを割いていたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は最終年度ということもあり、未完の現地調査や補足調査の計画が多く残っている。特に論文化していない浙江省温州市等での現地調査を行う予定である。そのため、経費使用の計画はあるので、しっかりと研究したいと考えている。
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Research Products
(13 results)