2015 Fiscal Year Research-status Report
カナダ契約移民の輩出と渡航後の地域的展開をめぐる歴史地理学的研究
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15K03025
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 典史 立命館大学, 文学部, 教授 (60278489)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | カナダ / 日本人移民 / 鉄道契約移民 / カナダ太平洋鉄道 / ロジャーズ峠 / 雪崩災害 / 大陸日報 / 県人会 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二次世界大戦以前、カナダへ渡った日本人の就業については、先行研究では漁業、製材業や商業が中心に描かれてきた。しかし、彼らの多くは自由移民であり、決して少なくなかった契約移民の存在は無視できない。自由移民と契約移民との輩出・受容構造の差異を導く必要がある。本研究では、カナダ日本人移民史研究が看過してきた契約移民をめぐって、20 世紀初頭における日本・カナダ両国の移民政策を背景にした輩出・受容構造、さらに渡加後の転業や再移動について歴史地理学的アプローチから明らかにする。 2015年度では、鉄道契約移民として渡航した契約の悲劇について、当時の新聞報道から明らかにした。1910年3月4日、ブリティッシュ・コロンビア州(以下、BC州)の内陸部のセルカーク山脈に位置するロジャーズ峠で雪崩が発生した 。カナダ太平洋鉄道の除雪作業に携わっていた70余名のうち、大規模な第二次雪崩災害によって58名の鉄道工夫が落命した 。そのうち32名は日本人であり、彼らの多くは移民会社を介した契約移民として3年間の労働契約を結んだ、いわば出稼ぎ移民であった。前著では、被災者の出身地からこれまでのカナダ日本移民の輩出地と異なる契約移民の実態を捉えることに努めた。そして、第二次世界大戦以前のカナダにおいて最大の日本語新聞『大陸日報』に掲載されたロジャーズ峠の雪崩災害の記事、とりわけ葬儀の様子から20世紀初頭のカナダ日本移民社会の諸相について考察した。 そこでは、カナダ仏教会、日本人会や県人会の重要性、さらに、『大陸日報』の記者について紹介した。とりわけ、これまでカナダ日本人移民史で等閑視されてきた福井県出身者を中心に解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
カナダへの契約移民について、鉄道契約移民の実態について、特にロジャーズ峠の雪崩災害について、当時バンクーバーで発刊されていた日本語新聞『大陸日報』の記事から事故の様子やその後の救援活動、特に日本人犠牲者に対する義捐活動や葬儀から看取できる日本人移民社会の諸相について明らかにした。今後は、炭鉱契約移民の実態を明らかに、契約移民の業種による差異を考察したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、日本の特定地域からの契約移民の輩出構造を把握する。外交史料館所蔵の「明治四十年移民取扱人を経由セル海外渡航者名」には、東京移民合資会社による約1,500 名のカナダ契約移民が網羅されている。すでに入手している名簿を概観すると、彼らは宮城・栃木・神奈川・静岡・福井・岡山・福岡・熊本・鹿児島・沖縄県の10 県に限定されている。ただし、出身地については県レベルまでの記載にとどまるため、同館所蔵の「海外旅券下附表」を精査し、市町村単位まで確認する必要が生じる。これらの資料には渡加目的が記されているため、炭鉱契約移民と鉄道契約移民との差異が見いだせる。つまり、特定の業種への就業種の違いを意図した契約移民の輩出構造に関わる地域性が見いだせるに違いない。事例とする炭鉱契約移民については、熊本県有明会沿岸出身者の関係者とは連絡がついているので、早急に資料整理・聞き取り調査などに着手する。
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Causes of Carryover |
カナダでの現地調査が、校務のため当初の予定よりも短期であった。そのため、海外旅費が、当初の予定よりも減額となった。また、アルバイトについて、当初予定していた方が健康上の都合で辞退され、その代替者を雇用するまでに時間を要した。そのため、当初に予定していた謝金もやや減額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度には計画的な海外調査とアルバイト雇用を心がけ、旅費と謝金の適正な執行を行なう。
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