2021 Fiscal Year Annual Research Report
A Historical Geographical Study on the Production of Canadian Contract Immigrants and Regional Development after Their Departure
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15K03025
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 典史 立命館大学, 文学部, 教授 (60278489)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カナダ / 鉄道契約移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度末に拙著『カナダ日本人水産移民の歴史地理学研究』を刊行した。拙著の末尾では、本科研で明らかにした諸点を今後の課題として提示した。 水産業をめぐる日本人移民の転業において、鉄道保線工から水産業への転入の解明は、今後も継続される。契約移民について、移民会社と提携したカナダの労働者派遣会社である日加用達会社を経て、炭鉱夫は提供された住宅に居住した。それに対し、粗末な宿舎、時には貨車が充てられた山奥での厳しい作業のなか、冬季から春季の融雪時には雪崩災害の危険にもさらされた鉄道保線工では、契約期間が満了するとサケ缶詰産業をはじめとする他産業へと転業する場合が多かったのである。自由移民として当初から水産業に就いただけでなく、契約移民からの転業者についても「水産移民」として検討しなければならない。これまでのカナダ日本人移民史では自由移民と契約移民は交錯せず、個別に論じられてきたのである。 このような実証を重ねる前提として、カナダへ移民を送出した移民会社を整理する必要がある。広島海外渡航会社、森岡商会、熊本移民会社や日本移民会社、そして本科研で取り扱った東京移民合資会社などの移民会社は、日本各地から契約移民を海外に送り出した。しかし、歴史学を中心とする先行研究では、外務省外交史料館に所蔵された「海外契約移民会社関係資料」などの文書から、移民会社の設立過程とその送出先を説明するに留まることが多かった。また、複数の移民会社の比較から検討すべき移民の輩出・受容構造に関する時代・地域差が明らかにされなかった。それは、会社毎に整理された海外渡航者名簿の精査を怠ってきたからであろう。会社毎に1,000 人を超える場合もある彼らの出身地について、適切な空間スケールで輩出構造を分析する歴史地理学の独自性が求められるのである。
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