2015 Fiscal Year Research-status Report
シベリア地方主義と民族学との相関的作用に関する研究:歴史人類学と思想史との融合
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15K03032
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡邊 日日 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (60345064)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化人類学 / ロシア / シベリア / 地方主義 / シチャーポフ / 民族誌 / 植民地 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、第一年度ということで、研究の基礎的環境を整え、初動的研究を行った。ハード面では、パーソナルコンピュータを購入し、必要なソフトをそろえた。 文献調査では、まず、(1)本研究の基幹となるシベリア地方主義の一次資料の全体像をつかみ、現在における研究状況を把握すること、(2)文化人類学の現在において、歴史的志向を持った議論が(特に「ポストコロニアリズム批判ショック」以後に)どのように評価されているか見通すこと、を心がけた。(1)については、日本シベリア学会に参加して、日本国でのシベリア研究の学際性のあり方を模索できた。特に考古学と人類学との協同の可能性や、歴史学と人類学との結合との可能性が、当初の推測よりも広く求められていることを知ったのは有益であった。また、北海道大学および付設のスラブユーラシア研究センターにて、シベリア地方主義に関する博士論文、シチャーポフの一次資料、および二次資料となるロシア語文献を収集できた。とりわけ、シチャーポフに関してはその一次資料のほぼすべてを入手でき、代表的な研究書をだいたい網羅できたのは大きな収穫であった。(2)については、植民地支配と言説編成との「共犯」的関係を問う視座は、かつてほどのインパクトはないが、民族誌的知識とはいかなる特徴を有し、その産出過程に独自な様相はありうるのかという開かれた問題構成のもと、民族誌という記述のジャンルとその歴史性を省察することの重要性が確認できた。 文献収集とともに読解作業も進められ、シベリア地方主義および19世紀ロシア民族学に関する英語文献の特徴と限界、今後の課題などを確認することができた。一言でいえば、事件史(出来事の史的経緯の解明)と思想的中身の解析とを有機的に組み合わせる作業が、今後は不可欠であろう、ということである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
私事ではあるが、2015年の春から夏にかけて自然気胸のため二回の入院と手術があり、研究の本格的開始に遅れが生じた。復調したのは実質的には9月からである。文献収集については、システマティックな収集は第二次年度での海外文献調査をまつにしても、日本国内で可能なことはほぼ実行し、完了しなかった作業も今度の見通しを得ることができた。「シベリア地方主義研究解題」を入手することもできたゆえ、文献収集については「合格点」があげられるが、第一年度に予定していた文献読解の量ということでは、シチャーポフのロシア語一次資料に関して当初の予定を果たすことが出来なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度の早いうちに前年度の遅れを取り戻す。具体的には読み残しているシチャーポフの一次文献の解読を進め、彼のロシア史理解・民族学的素養と連邦制構想との内的関連を探る。あとは、当初計画した「2016年度予定」を静かに、しかし確実にこなしていくのみである。
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Causes of Carryover |
数千円の差額であれば、次年度に持ち越しをしても問題ないと判断したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の最大の支出計画は、夏に予定されているロシア海外出張、およびそのいくつかの都市における文献調査、文献収集(未公刊文書のリスト化も含む)である。また、ロシアでの最新の研究状況を把握するため、専門的知識の供与に関する支出や、収集した文献の整理に対する謝金も見込まれる。
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Research Products
(1 results)