2015 Fiscal Year Research-status Report
現代インドの村落・都市中間地帯における親密圏の再編―移動社会を支えるケア関係
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15K03040
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
常田 夕美子 大阪大学, グローバルコラボレーションセンター, 特任准教授(常勤) (30452444)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インド / ケア / 親密圏 / ラーバン / 家族 / 親族 / 現金収入 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代インドにおいては、経済発展が進み、人びとの移動が増えるなかで、村落と都市の間を媒介する村落・都市中間地帯(rurban, 以下ラーバン)が拡大しつつある。これは、村落と都市が溶融し、人・モノ・カネ・情報が両者の間を環流的に移動する現象と関連している。ラーバンが村落から都市への就学・就職のステップアップやその後の社会経済的上昇のために重要な機能を果たしている一方、動きにくい人びと-老人、寡婦、乳幼児などの社会的弱者-のケアを誰がするのかという課題を抱えている。本年度は、社会的弱者のケアをめぐるラーバンの位置づけについて、調査研究を行った。4 月~7 月下旬、9 月中旬~2 月中旬、3 月は、国内で関連の文献資料を収集し、読解を進めた。8 月上旬~9月上旬、2 月下旬は、オディシャー州のラーバン地域モトリ、モンダラバスタ(クルダー町、ブバネーシュワル市の通勤圏)においてフィールドワークを行った。そこで明らかになったのは、モトリ、マンダラバスタでは、近年の道路整備により、市街地に通勤・通学する人びとが増加し、医療施設などへのアクセスも容易になってきたことである。さらに、低学歴の独身男性たちは積極的に車の運転のスキルを身につけ、数年間タクシー会社で勤務したのち、個人でタクシー・サービスを運営し、プリー市、ブバネーシュワル市、コルカタ市、チェンナイ市など広範囲にわたる地域に活動範囲を広げ、現金収入を得ていることが分かった。彼らが得る現金収入は、ラーバンに住む家族の生活費のみならず、医療費、学費、持参金に使われる。独身男性の現金収入は、年老いた両親の医療費、同居する兄の子どもたちの医療費、養育費など、現金が必要なケアのために重要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの調査研究では、ラーバンにおける新たな現金収入の獲得方法が明らかになり、それらの収入がいかにして老人や子供のケアに使用されているかが分かってきた。しかし、老人、寡婦、乳幼児の世話を誰がしているのかについては、まだ判明しておらず、それについては、主に女性を中心とした現地でのインタビュー調査が必要である。当初予期していなかったことは、パラ地域での調査のためには、リスク管理、安全確保のため、車をレンタルする必要が生じたことである。そのため、パラ地域での調査は中止し、調査地を滞在先から徒歩で行ける地域に限定することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は、引き続き現地調査を行い、特に女性を中心としたインタビューを行う予定である。
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Causes of Carryover |
勤務先を離職し、3月には用務の引き続き等を行うため、当時予定していた2月~3月のインドでの現地調査期間を短縮せざるを得なかったために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度は、インドでの現地調査期間を大幅に延長し、より充実したデータを収集する予定である。
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Research Products
(6 results)