2015 Fiscal Year Research-status Report
「悪」として取り締まられる妖術、「悪」を取り締まる「呪詛」の人類学的研究
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15K03042
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
梅屋 潔 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (80405894)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 呪詛 / ルオ系偉人の霊力 / クラッッォララ神父 / ブガンダの文化的遺構 / バンツーとナイル |
Outline of Annual Research Achievements |
研究はおおむね予定通り進捗した。8月12日から9月10日までのウガンダにおける現地調査において、マケレレ大学のキルミラ教授とエリア講師らと会合を持ち、呪詛の観念のバンツー系民族とナイル系民族のちがいなどについて議論し、研究計画の方向性について意見交換を行った。カンパラとトロロを拠点としつつ、調査対象地域及びモロト県を含む北東部の情報収集も行い、一定の成果を得た。ブガンダ王国のいくつかの文化的遺構をムロンド王子の案内で訪問し、本研究テーマについても議論することができた。なお、大統領選挙に際してかねてから注目していたルオ系偉人(多くはアミン政権で殺害された犠牲者)の再埋葬やその事績を記念した祝日を設定するなどの動きが政府にみられた。このことは少なくとも現地においては偉人の強力な霊力を利用するとの解釈を生んでいる。調査対象のひとつカリモジョンについても既知のガブリエル氏を通じて1日のみモロトを訪れ近辺の情報収集を行いえたことは、今後の調査の実現可能性にとっては何よりの成果である。また9月16日からのイタリア出張においては、ローマ、コムボニの文書館でクラッツォララ神父の日記などをデジタルカメラで撮影保存した。国内でも文献渉猟は順調である。また、熊本大学の慶田勝彦氏と会合をもったほか、長崎大学の波佐間逸博准教授と会合を持ち、4月からの科研B(代表者波佐間)での協力と併せて本研究における協力体制を確認した。さらに別件で訪れたケープタウン大学でも、ニャムンジョ教授をはじめとし、ルンギスレ教授やハリー教授など数多くの研究者との協力体制が期待されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究期間全般にわたって予定している調査地のうち北東部での滞在は1日であったものの、モロトの状況を知りえたことは、収穫だった。ウィッチクラフト法についてのまとまった調査はできなかったが関連の議論について現地研究者たちと意見交換ができたこと、国内の研究者たちと順調に意見交換できたことなどから、順調に進展していると判定する。さらにこれまではあまり強くなかった王国との関係が強まってきたことは、今後バンツーの研究を順調に進展させるうえで非常に明るい見通しを与えるものである。ローマでの発見は、本研究計画にとどまらず、学説史上の発見と呼びうるもので、丁寧な公開と分析が必要とされると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
北東部での現地調査を強化すること、中央部でのバンツーの調査をまとめることと合わせて、本年度は手がまわらなかったウィッチクラフト法についての丁寧な分析を展開することが必要である。また日記資料については、すでに英語圏で類似議論が公表されていないか調査してから世に問うべきである。
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Causes of Carryover |
本研究で最も重要なのは海外旅費であるが、その計算のなかで若干の当初予定からの読み違いがあったため、また、ほかの経費とのマッチングによって、若干の残高が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画を修正し、当初計画で手薄だった物品購入を次年度に強化するために用いる予定である。
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Research Products
(15 results)