2015 Fiscal Year Research-status Report
東南アジア島嶼部の高地社会におけるコーヒー栽培と生活様式に関する人類学的研究
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15K03052
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
福武 慎太郎 上智大学, 総合グローバル学部, 准教授 (80439330)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 東ティモール / インドネシア / コーヒー / 贈与交換経済 / 高地栽培 |
Outline of Annual Research Achievements |
東ティモール民主共和国における1)コーヒー豆栽培導入の歴史的経緯と貨幣経済の浸透、2)贈与交換経済の機能と貨幣経済との関係に関しての調査が順調に進んでいる。3月に行った現地調査の際に得られた情報で、コーヒー栽培は1860年代に現在のエルメラ県ハトリア郡で始まり、そこから広まったということからわかった。当初はポルトガル人による農園栽培だったが、伝統的主張を通じて、多くの人々に栽培が奨励された。その後、入手した文献史料でも同様の事実が確認された。 聞きとりの結果、様々な儀礼の際に責務となる水牛、豚などの家畜の供給が、コーヒー栽培農民にとって大きな負担となっていることも改めて確認された。近年、伝統的な資源管理法であるタラ・バンドゥが行政主体で行われ、儀礼の際の負担に制限をかける目的で実施され、効果をもたらしている地域もある。しかしタラ・バンドゥを守らない人たちも少なくなく、依然として負担は大きい。 貨幣経済と贈与交換経済の併存が、当該社会に暮らす人々に負担をかけているのは間違いがない。今後はスマトラ・バタック社会、スラウェシ島トラジャ社会とも比較しつつ、実態に関する調査を継続する。 今年度はアラビカ種高地栽培との比較のため、ジャワ島におけるロブスタ種低地栽培に関する現地調査も実施した(8月と2月)。ロブスタ種低地栽培は、オランダ人や地元の貴族層による大規模農園が主流であり、現在でもプランテーションが主流のようである。他方、アラビカ種高地栽培は、山岳先住民の家族世帯単位による小規模栽培が主流である。以上のように、ブラジルを中心とするプランテーション栽培とは対照的な状況が、東南アジア海域世界において見られることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の主目的であるコーヒー豆栽培導入の歴史的経緯、贈与交換経済と貨幣経済の関係について、東ティモールの事例を中心におおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
東ティモールにおける調査の継続のほか、他地域(スマトラ、スラウェシ)における現地調査を行うことにより、海域世界の山岳先住民社会における贈与交換経済と貨幣経済の関係性について明らかにしたい。
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Causes of Carryover |
出張先の一部変更と期間短縮により、次年度への繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度の他の研究との関連で実施できなかった現地調査の旅費として使用することを予定している。
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