2017 Fiscal Year Annual Research Report
Comparative Study of Shame - Exclusive Communality and Social Bonds in the Marginal Groups of South Asia -
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15K03064
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
橘 健一 立命館大学, 政策科学部, 非常勤講師 (30401425)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 和之 阪南大学, 国際観光学部, 准教授 (40469185)
山本 達也 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (70598656)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 恥 / 民主化 / 震災復興 / キリスト教化 / 海外出稼ぎ / デジタルメディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ネパール内戦終結後の民主化と大震災からの復興、キリスト教への入信、海外出稼ぎ、デジタルメディアの展開に注目し、それらに見られる恥の問題を追求、以下の知見を得た。 マオイストが政権に加わり王制が廃止されるなか、従来、恥と結びつけられてきた先住民と低位カーストの地位は相対的に上昇し、そうした存在を卑下することが逆に恥ずかしいことと見なされるようになった。また、震災の復興が遅れるのにつれ、政党政治や政治家の恥知らずな状況が批判されるようになった。また、必要としない人が復興支援を受け取る恥も語られるようになり、様々な場面で再分配の正統性が問われるようになった。 近年キリスト教に改宗する先住民が急増したが、その背景でシャーマンによる供犠が無駄な恥ずべき行為とされるようになった。改宗は同時に「伝統文化の喪失」という恥と結びつけられようになった。 海外出稼ぎが広がり、得られた資金で生活を向上させる世帯も増加するなか、出稼ぎで何も得られなかった恥、出稼ぎに行けない恥が、語られるようになった。 スマートフォンの普及でデジタルメディアの受容が進み、ネットを介した自由恋愛の領域も広がり、遠方の異民族との結婚が珍しくなくなった。そうしたなか、親に結婚を決められる恥、近隣で結婚する恥も語られるようになったのがわかった。さらに、自由恋愛によって成立した世帯が、国内に留まる傾向にあることも確認できた。 本年度は、歴史資料の調査も実施したが、土地なし層が恥ずかしい存在とされ、同時に政府から援助されるべき者として認められてきたことを把握した。これはインドとは異なるネパール独自の状況で、ネパールにおける社会的絆の基本が、土地所有の有無と政府林の付与にあったことが理解できた。全体として、土地と交換枠組みに付随していた恥の感覚が、個人の生活上昇や文化表象と結びつくようになってきたことを把握できた。
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Research Products
(12 results)