2018 Fiscal Year Research-status Report
日本人の異文化間結婚による国際移住と老いに関する文化人類学的研究
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15K03068
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Research Institution | Momoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
金本 伊津子 桃山学院大学, 経営学部, 教授 (60280020)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 国際移動 / 国際結婚 / グローバル・マイグレーション / 高齢化 / 老い / 在外日本人 / エスニシティ / アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
1 多様な文化的背景を持つ移民で構成されている多文化社会におけるエスニック・マイノリティの老いは、エイジズムとエスニシティから生起する社会的不利益に瀕していると指摘されている。「モデル・マイノリティ」と称されているアメリカ多文化社会の日本人・日系人も、異文化で老いを迎える「モデルなき喪失の過程」に不安を隠せない。「国」「文化・言語」「家族」「社会福祉・医療システム」などの境界を越えたライフ・スタイルを持つ者の高齢期における尊厳は、高齢者の文化的アイデンティティと、居住する国の医療・社会福祉システムとのせめぎあいの中にある。
2 この問題に注目して、2018年度にアンケート用紙を用いた量的調査「在ニューヨークの日本人・日系人の高齢化に関する意識調査--訪問介護の在り方を探る--」(遠山(金本)・中島(監修) 2019年)を実施した。これにより、多くの日本人・日系人高齢者が「日本的なきめの細かいケア(言語・文化のソフト面)を供えた施設(居住型介護住居というハード面)」を強く熱望しており、より文化的ケアが日本人・日系人高齢者の尊厳に深く関わっていることが明らかとなった。
3 この傾向は、アメリカ・ニューヨークのみならず、ブラジル、イギリス、オランダ、ドイツ、オーストラリアの日本人のコミュニティにおいても同様に観察されているが、集団で国際移住した日本人移民のネットワークが地域に根付いているコミュニティ(例えば、ロサンゼルス、シアトル、バンクーバーなどの日本人・日系人の多くが集住するコミュニティ)を除き、現地における日本人・日系人のための高齢者福祉施設設立の動きは鈍い。また、日本への帰国を老いの選択肢のとして捨てきれないことなどから、コミュニティ自体のもつ脆弱性が明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ニューヨークの日本人・日系人対象(約2000名)にアンケート用紙を用いた量的調査を実施し、その結果を報告書にまとめた。また、ニューヨークにおけるフィールドワークおよびインタビュー調査を実施し、2019年3月にニューヨークの日系コミュニティに対して調査報告を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
1 2018年度の量的調査を踏まえて、補足的な個別のインタビュー調査を継続して実施する。
2 ニューヨーク在住の研究者および実践者との共同研究を進め、Asian American and Asian Research Institute (City University of New York)のパブリック・レクチャ―およびニューヨーク日系人会においてシンポジウムを計画し、コミュニティに対する成果発表を計画・実施する。
3 2019年度は本研究課題に対する研究助成の最終年度であることから、国際結婚という観点に絞って、通時的比較研究および共時的比較研究を行い、その結果を日本およびアメリカの学会での口頭発表および論文発表を行う。
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Causes of Carryover |
(理由)2018年度においては、アンケート調査実施のため2回(実施準備と実施後の報告)のニューヨーク出張が必要であったが、現地コミュニティの協力によって宿泊費を大幅に圧縮できたことによる。
(2)2019年度においては、ニューヨーク在住の研究者及び実践家との共同研究を実施予定であることから、このための旅費に充当する計画である。
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Research Products
(4 results)